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化石採りと発破(はっぱ) [One's Boyhood story]

発破(はっぱ)とは要するにダイナマイトによる爆破である。


中学1年の秋、ボクと生物部と称したうろんなクラブ(一応学校の正式なクラブではあった)の仲間達は、山を2つ越した町から通っていた当時の科学を教えていた担任の先生の指導を受け、その町にある鷹ノ巣山の大きな石切場(鷹巣石灰とか呼ばれていた)に化石を採りに行った。
『生物部』というと真面目そうだが理科室で生物担当の「フランケン」(背の高い死人のように色が白い、つまりフランケンシュタインの怪物ような男の先生のあだ名)の目を盗み、解剖後のカエルの脚や飼育していた無毒のサソリをヒーターで焙って醤油を付けて食ったりしていた。
(後に東大に進学したI部長は平気で芋虫でも食える男だった。後にボクは東京で中野ブロードウェイにあったげてもの専門の店でシマヘビを食っている彼を発見したことがある。)
思いっきり馬鹿なことをやって、話の種は尽きないが、ボクらが学校から一度も日常生活で厳しい処分を受けなかったのは、先生方の評判だけはは良かったからではないかと思う。
つまり、サソリは食ってもタバコや酒はやらなかったし、イタズラはしたが、爆笑で終わる類のものがほとんどであったためだろう。
ボクらは無遅刻無欠席成績優秀なアウトサイダーであった。
例えば手製で原付バイクのエンジンを使って四輪ゴーカートを作り、ブレーキ部分の作りが甘く、試運転でレンコンの取り入れを行っている沼に飛び込んだり、生物の解剖のカエルの標本をウシガエル(食用蛙)でやりたくて夜中に水田に入り、動きがとれなくなって全員明け方にお百姓さんに救出されたり、枚挙に暇がない。
それでも、ボクらは学校では地道だった。
で、その日は山2つを朝早くから自転車で走破し、5人の仲間は先生の
待つ鷹ノ巣山のすり鉢状の巨大な石灰岩採掘場に、目を見張り先生の解説を受けながらあっちこっちで一心不乱に石をたたき割っては、フズリナや貝の化石を見つけて歓声を上げていた。
先生が帰られてからもボク達は許可を受けて採取を続けたのだが、あんまり夢中になっていて、サイレンの音に気づかず、偶然昼飯のために採石場の入り口近くの小屋の方にふらふら雑談しながら歩いていた。
「はっぱ2分前」「待避」とかいうアナウンスがあり、ヘルメットを付けて作業服を着たおじさん達がどこからともなくバラバラと湧いて出て、一目散に小屋の方をめがけて走っていた。
ボク達は何のことやらわからず、その光景を眺めながら、おじさん達が真剣に走ってゆく方向に何となく不安になって小走りになりかけたとき、あちこちでドカン・ドカンと耳がおかしくなるくらいの轟音が響いた。
「危ないぞー」というおじさん達のあまり必死とは感じられないぬるい警告がきこえたが、ふと見上げた空に豆粒ほどの黒い物体がいくつも浮かんでいてソレがこっちに向かって飛んで来るものだとわかった。
小石だと思った。
数瞬の内にそれは大きな石だと思えた。
そしてそれらがボク達の頭上や足許に落下する段階では、『逃げなければ命がない』というレベルの大きさの岩になった。
ボク達は必死に逃げ、小屋に飛び込んだ者、逃げ遅れて、ショベルカーの後に隠れた者、様々だった。
飛び込んだ瞬間小屋の屋根が震えた。
丈夫に出来ているらしい梁は鉄骨で、中にいる大人達は慣れた所作でお茶を飲んでいた。
マンガみたいな図だった。
もしもボク達誰かに当たっていたら、先生も現場監督さんも大変なことになったのではないか。
昔は緩かった。
不思議とそういうときは何も起こらないものです。


帰り道みんな疲れ果て、山二つ越して帰る自転車は重たく、ひいひい、いいながらペダルを踏んで帰る途中、友達が我慢できなくて山道を左右に切り開いた切り通しの側で立ちションしてふと、前を見ると、そこには露出して間もない三角貝の化石の塊が土の間から顔を出していた。
当時の地方新聞は立ちションとは書いてなかったけれど、ボク達はその他大勢で新聞に小さく載った。


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Matdumn

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by Matdumn (2020-03-02 17:22) 

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