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ラフマニノフのショパン [音楽]

夜想曲第2番変ホ長調op.9-2


このような演奏を今する人はいないに違いない。
それは舞踏会の中休みに紳士淑女がピアノの回りに集まり、ワインやシャンペンや、ベルモットの香りと香水の混然とした香りに包まれたサロンで弾かれるノクターンです。
例えばそこには、現代の歌い手が他人の楽曲を歌う時、ポップスでも何でも楽譜に忠実であろうとするよりも、その曲を自分の肉声で表現する時の当然の違いや崩れや解釈を全面に個性に包んで提示するように、ラフマニノフは自分の主情をショパンに載せ、その音楽で語っている。
例えば陽水の歌をミスチルの桜井君が歌うとどうなるのかと同じように、この人が弾くとショパンはどういう風になるんだろう?
そんなレベルでの好奇心。
芸術になる前の夜想曲が持っていた多様性。
その一端が聴ける。
楽譜を片手に装飾を見つけるたびに聴くに堪えないというように眉をひそめる人々とは違う世界で弾かれるショパン。
ひっそりと弾かれるその抒情は湿り気を帯びた、でも、決してなまなましいものではないエロティシズムを感じさせる。
その左手はどこまでもソフトで次の音に移る時のシルエットがまるでぶれて見えるかのように優雅。右手の旋律は芯に強靱さを残しながらも、華美に誇るところがない。
これが、当時の弾かれるべき場所で弾かれる夜想曲を、その場で弾いていたものが持つ最後の雰囲気なのでしょうか。

プレイズ・ショパン

プレイズ・ショパン

  • アーティスト: ラフマニノフ(セルゲイ),ショパン
  • 出版社/メーカー: BMGビクター
  • 発売日: 1994/12/16
  • メディア: CD

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コメント 3

依光次郎

 HeadLineReaderで読み、買ってみたいとコメントのために来てみるとYouTubeがありました。

 紳士淑女のために弾くのでなく、自分が没頭して弾いている周りに紳士淑女が集まってくるという場面を思い浮かべました(クラシックに弱いもので)。良いですね、やはり買いそう。



by 依光次郎 (2008-05-06 07:23) 

依光次郎

P.S.
 よろず評論家(本職アナーキスト?)の竹中労が、歌い手によって数百有った佐渡のおけさが五線譜に載ることにより死滅したと語っていました。ある意味、楽譜を片手の人は可哀相。まあ、クラシックは五線譜の上に自己の即興演奏レベルを昇華させると理解してはいますが・・・。


by 依光次郎 (2008-05-06 07:30) 

Mineosaurus

以前モーツアルトのピアノソナタの二つの演奏を取り上げたことがあります。ひとつはグレン・グールドひとつはフリードリヒ・グルダでした。両方ともインフラには決してなり得ないのですが、モーツアルトとして鳴っています。楽譜というのはその作品の基本的な姿を描いたものではないかと思うのですが、作曲家の方にも楽譜から外れていることを好まない人もいるようで、楽譜に込める作者の心も一様ではないようです。ただ、このラフマニノフはおっしゃるように誰かのためにあんなショパンを弾いたわけではないんでしょうね。弾きたい自分が先にあったのじゃないかと思いますね。
by Mineosaurus (2008-05-06 19:18) 

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