ふたつめのため息 [映画-音楽]
SospiriあるいはSospiro 国によってわずかに発音が違うらしい。
ひとつ目のため息はピアノで奏される。
リストのSospiroはいかにもリストの器用なピアノによって語られた技術的印象であり、リストがあまり好きでないボクはここから情動的なものを拾うことができない。
もっと簡潔な音で単純に表せる内容だと思うけれど、リストはそうはしない。
これは聴衆につかせるため息だと聴いていて思った。
昔のピアニストの技量は現代のピアニストの演奏技術では割りきれない評価があったらしい。
速く弾く。
ミスタッチがあってもいい。
技術が超絶していれば巨匠であった。
リストによって片っ端からパラフレーズされたベートーヴェンの交響曲なんかがいい例です。
ふたつ目のため息は、これは作品がつく長い嘆息。
悲嘆と諦め、それはやはり旋律の楽器でなければ出ない類の表現なのだと感じ入る。
エルガーの弦楽合奏によるSospiri。
ヴァイオリンもいいけれど、さらにチェロだと嫋々とした哀しみを感じる。
ナタリー・クレインのチェロで聴いた。
- アーティスト: Natalie Clein,Edward Elgar,Vernon Handley,Royal Liverpool Philharmonic Orchestra
- 出版社/メーカー: EMI Classics
- 発売日: 2008/02/05
- メディア: CD
ナタリー・クレインといえば確か、エルガーのテレビ・ドラマのシーンで彼のチェロ協奏曲のむせび泣くようなフレーズを弾いていた。
美しいチェリストというより、ボクはつい最近まで本業は女優さんだとばかり思っていました。
エルガーは母国イギリスでは何度かドラマ化されています。
彼の作曲活動が様々な女性によって動機づけられていることはよく知られていますが、彼の妻アリスをはじめ様々な女性が彼の作品に投影されています。
この曲も、短いですが長いため息のような旋律の中に悲恋への万感がこもっているようで、終わることがわかっていて元に戻れないのに愛おしく両手をさしのべたまま空しく時が過ぎて行くような何ともやるせないエレジーです。誰に対してのため息なのでしょうか。
エルガーは男らしい気質の持ち主ではあったのですが、イギリスの男っていうのは愛に脆いんですよね。
男らしくありたいと思う気持ちと裏腹にこういう余韻嫋々とした作品を書く。
「威風堂々」は雄ライオンのたてがみのようなものなんですね。
あるイギリスの作曲家の物語『エルガーの第10番目の女神』というDVDがカタログにありました。
Tenth's Muse: The Life of an English Composer
- 出版社/メーカー: Kultur Video
- メディア: DVD
Elgar: Symphony No. 1; Elegy For Strings; Sospiri
- アーティスト: Edward Elgar,Andrew Davis,BBC Symphony Orchestra
- 出版社/メーカー: Apex
- 発売日: 2002/11/25
- メディア: CD
Elgar: Sospiri - Music for Violin and Piano
- アーティスト: Edward Elgar,Julian Milford,Lydia Mordkovitch
- 出版社/メーカー: Chandos
- 発売日: 1998/05/19
- メディア: CD
Elgar: Symphonies 1 & 2; Cockaigne; Sospiri
- アーティスト: Edward Elgar,Jeffrey Tate,London Symphony Orchestra
- 出版社/メーカー: EMI
- 発売日: 2004/06/01
- メディア: CD
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