プロフェッショナル・ベートーヴェン：恐竜じじいになっても．．．：SSブログ

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プロフェッショナル・ベートーヴェン　[音楽] [編集]

ベートーヴェン／弦楽四重奏曲第１番ヘ長調OP.18-1

第１楽章　アレグロ・コン・ブリオ
第２楽章　アダージオ・アフェツィオーソ・エ・アパッショナート
第３楽章　スケルツォ：アレグロ・モルト
第４楽章　アレグロ

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲のキャリアは第３番ニ長調から始まったとされる。
この第１番が出版を早められたのは彼の友人であるヴァイオリニスト、シュパンツィッヒのアドバイスがあったと言われている。
確かに、この作品には明確なベートーヴェンの個性が理想的な形で凝縮している。
明の中の構築性。大理石のようにしっかりとした明朗堅固な曲想。

第２楽章。
一転して深いパトスを秘めた仄暗い深刻さ。
この時期のベートーヴェンとしては異例の暗いロマンティシズム。
室内楽の分野で求められていた楽天的で娯楽的な大衆のよそ行きの殻を突き破り、深い同様の中に人間的な共感を覚えるまで、作品とともに聴くものを芸術の高みに引き上げる。
この時期のべートーヴェンとしては非常に異質な風貌を見せている。
それはとりもなおさず、ベートーヴェンの大きさであり、最初に示すには絶好の曲想であったに違いない。
盟友の薦めに従った彼のプロの音楽家としての直感を知らしめる。
そして、モーツアルトを苦悩させ、追い込むことになった自らの書きたかったものと聴衆の間にできていた大きな隔たりは既にこの頃、聴衆の耳と音楽的包容力の変化によって、より追い風となりつつあったのだろう。
音楽に求めるものは確実に変化しつつあった。
美しさは多様化し、整った美だけが生き残る時代は終わりつつあった。
まさに、彼の時代が始まろうとしている。
入念に練り上げられ、幾度も加筆され推敲された結果、作品は堅牢で緊密な各楽器の均等な歌の中に練り上がって行く意志的な美しさを手に入れている。
短いスケルツォの後のフーガを交えたアレグロのフィナーレ。
華美もなく、饒舌もなく、アポロ的な造形の中にクッキリと残る影をも描き込んだ。
ベートーヴェンは敢えてこの曲をキャリアのスタートに選んだ。
これ以後作曲家は弦楽四重奏曲という分野に自らが置くスタンスをベートーヴェンの初期に置くか、中期に置くか、後期に置くかその選択を常に迫られ、その結果一曲の中に様々な実験と書法と曲想を詰め込み、彼の背中を見続けて、生涯にほんの数曲のもしくはたった１曲の成果を残すだけになってしまったのである。
その遙か後呪縛を解かれた民族主義の台頭によって顕れた天才ベラ・バルトークが６曲の作品を送り出すまで、長い年月が費やされた。