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重層するモノクローム [音楽]

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プフィッツナー/チェロ協奏曲イ短調『遺作』1888年

 

第1楽章 アンダンテ モルト ソステヌート
第2楽章 アレグロ
第3楽章 アダージオ モルト トランクィロ
第4楽章 アレグロ~アダージオ

『遺作』という訳は当たらないのかも知れない。
彼が残した3曲のチェロ協奏曲の中で最も若書きの作品だけれど、この作品は作品番号を持っていない。
そしてこの作品の主題の類似性。
作品52の協奏曲(第3番にあたる)同じイ短調の作品の主要主題はこの作品と同じ旋律線を持つ。
破棄できなかったこだわりか、それともこの作品自体が紛失され、第2番が書かれた後に発見されたものなのだろうか。
プフィッツナーの文献は田舎に住んでいると目にすることがあまりないので素人のボクにはその辺がよくわからない。
初演が1977年であること、献呈された形跡が後の2作品のように明確でない。
同じイ短調で同じ主題を使用しながらボクはやや晦渋になりつつある精緻な半音階的技法が施された作品52の世界よりも、このわかりやすく抒情性に富んだ作品を好む。
意欲的な作品52の世界よりもチェロは自然に歌い、眩惑するパトスに音楽は振幅が大きく、よりヒューマンである。
第1楽章は劇性に富み、灰色の渋みのあるフォーマットの上を同系色の温もりのあるチェロの太い線が縦横する。
管弦楽の巧みさ、自然さ。独奏楽器は溶け込みつつ浮かび上がる場所を知っている。
プフィッツナーの作品の大半は歌劇、リートにあり、その旋律の美しさと抒情性はこの作品でも惜しげもなく発揮されている。
第2楽章はこの作品を4つの楽章に見た場合の第2楽章ですが、有機的な関連性は強く、分ける意味はあるのかなと思っています。
第3、第4楽章は見事です。(これも同様に曲調が替わるくらいの意味しかありませんね。)
ゲルマンの血の中にある精神の沸騰。
その意識と、結果に示される音楽は、世紀の遅速を問わなければブラームスやメンデルスゾーンの域にあり、ホルンに重なって謡うチェロの見事な仕合わせは、まるで楽劇の幕引きに向けた音楽家の渾身が聴ける。
幻想的に回帰される主題がオーケストラの金管の上に降り、静謐の後にチェロのカデンツァが続くその絶妙。
変幻する主題の有機的な閃き。
これを先に聴いてしまうと、名作といっていい作品52番が先に描かれたラインを慎重に絵取って行ったのではないかという思いすら生む。(そうは言ってもやはり作品52も素晴らしいけれど)この音楽からはあまりたくさんの色彩は見えない。
しかし、単彩の濃淡が意識の中で重なり、そこに特有の肉の厚さと血の流れを感じさせる。灰色の中に流れるピジョンブラッド。

YouTube では第4楽章とされている部分です。
どちらかというと第3第4楽章でひとつの楽章のようですが、その一番短い部分。
素晴らしいですぞ。






 

プフィッツナー:チェロ協奏曲 第2番イ短調Op.52/同1番ト長調Op.42/同3番イ短調

プフィッツナー:チェロ協奏曲 第2番イ短調Op.52/同1番ト長調Op.42/同3番イ短調

  • アーティスト: プフィッツナー,Werner Andreas Albert
  • 出版社/メーカー: CPO
  • 発売日: 1987/10/01
  • メディア: CD



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コメント 1

matcha

いいですね。チェロと管弦楽の絡みも最高。
素晴らしいコンチェルトです。
また、いい曲のご紹介、有難うございます。

by matcha (2011-01-13 22:52) 

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