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清廉の中の苦 [音楽]

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ボロディン/小組曲より第1曲『修道院にて』


アンダンテ・レリジオーソ『ゆっくりしたテンポで敬虔さをもって』の指示がある。4分の4拍子。
おッそろしく遅筆の作曲家ボロディンが52歳の円熟期で8年の月日がかかっている。
もっともその間ずっとこの曲を作っていたわけではない。
何しろ代表作の『イーゴリ公』にしてグラズノフらが後に補筆完成させたくらいだから、本業の医学の方が忙しかったということも言える。
この人の作った医療機器は今でもリッパに活用されているくらいだから、ある意味音楽は余技とも言えた。
誰からも愛され、グラズノフ以下の大作曲家にも敬愛された人柄の良さ。
作曲を行うにつき、あまりにも多くの資料を集め、研究に没頭し、ついには飽きてしまって作曲を放り出す。
でも、その才能がスケッチに残った片鱗はグラズノフをしてそのままにはしておけないと固く誓わせるほどのもの。
でも、彼は生涯医学を捨てなかった。
いるんだね、こういう人。
王になる才。
そんな人がまあ、相変わらず歳月はかかっているが、とにかく完成させている小曲集。
一部を管弦楽に編曲したのも本人ではない。
『修道院の円天井の下で 想うのは踊りだけ 踊り手と踊り手とを想う 想うのは踊り手だけ 愛の歌を夢見る 愛されている幸福が子守歌となる 修道院 甘き夢』
ボロディン自身がプログラムに言及していてその意味では標題音楽といえなくもない。
その中で第1曲の静謐と共鳴の音楽は深く耳に残る。
プログラムからは修道院は女性修道院であろうか。響きの中に残る広さは教会のような大衆に向けられるものではなく、日常に修練が想定される峻厳な部分から打ち出されて反響する。
この行間の多い音楽の中に浮遊する響きの暖かさ。
打ち込まれた和音にある経験と峻厳が揮発する先にある感情の揺れ。
この音楽は物語の繰り広げられる空間だけを描いているけれど、発せられた響きが均等な時間感覚で反対側から反響する。
絶妙の空間把握の中に夢の鏡が閉じる。

 

 

 

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