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気むずかし屋の笑顔 [音楽]


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フランク・ブリッジ/チェロとピアノののための2つの小品

1.瞑想
2.春の歌

Bridg.jpgこれら二つの小品はいずれも1912年に気紛れのように創られている。
先鋭的な作品が多くを占めていた晩年と異なり、この辺の作品、特に小品や室内楽には旋律的で懐かしい雰囲気を持っているものが多い。
ボクはブリテンの師匠として感覚的で先鋭的な作品よりも、彼のこういう素朴な情緒が好きです。
某イギリス系のチェリストのアンコールピースとして初めてこれを聴いたのはもうずいぶんと年齢を遡らなければならない。
絵をやりたいという裡からの訴えと自分の選択した学業の落差に苦しみ、あてどもなくさまよっていた頃ですね。
その頃読んだ本や、聴いた音楽、観た映画、訪れた町や、出会った人や失った人全てが今のボクの表現の根幹にある。
その時言い表せなかったことが、ジジイになって自分の言葉に還ってきている。
第一曲目はよく聴いたね。
当時はウォークマンに録れて赤坂見附のサントリーの銀の匙の地下にあったカーヴ・ド・ヴァンに通ってワインを勉強してた。ビルの中なのに床はオークの板張りで歩くとギシギシ音がした。
カウンターの横にあった小さなドアからガーヴにはいるとかすかな黴の匂いとコルクが乾かない程度に湿った空気、網掛けしてある裸電球のオレンジ色の昼光。
5センチを超えるような長いコルクを使ったクラレットやバーガンディの名品。
何も考えず、棚や箱をみてまわった。
後頭部にはこのブリッジの『瞑想』が聞こえていた。
深く目を閉じて何も考えず、脳裏を通過する想念を鏡のように心の目に映してゆく。
そんな瞑想の沈下したイメージではなく、太く長く、荒々しい眉毛が瞼にかかりそうな気むずかしい男が吸っているパイプを唇からから離し、沈思から突然口元に笑みを浮かべて思い出し笑いをする。
目尻の細かい皺まで笑っているけれど、とても静かで遠いところの記憶から訪れた微笑み。

アンダンテ・モデラートのが深い歌が快い。

アレグレット・コン・モートは『春の歌』という標題でブリッジという作曲家の親密な部分が、こういうさりげない情景の中に好ましく顕れている。
若い頃の写真は理知的で決してボクがイメージするような頑固者の風貌ではないけれど、神経質で気難しそうな眼鏡の奧に周りを眺める優しい光がある。



Cello & Piano Music

Cello & Piano Music(残念!Spring Songのみ収録)

  • アーティスト: Benjamin Britten,Frank Bridge,Barry Snyder
  • 出版社/メーカー: Bridge
  • 発売日: 1995/08/14
  • メディア: CD

icon こちらはチェロの作品を全て網羅しています。 icon




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Silvermac

796キロの旅から無事に帰宅しました。
by Silvermac (2012-05-29 10:36) 

nana_hyr

やはり弦楽器って好きだなぁ。
by nana_hyr (2012-05-29 19:11) 

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