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本筋 [音楽]

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ボルトキエヴィチ/ピアノ協奏曲第3番ハ短調op.32

 

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第1楽章 グラーヴェ-カデンツァ
第2楽章 アンダンテ-レント.マエストーソ.ソレンネ(厳かに)
第3楽章 モデラート

YouTube にはモノラルの凄く手の早い演奏があって、ちょっとこの協奏曲の細かいニュアンスが潰れてしまって捉えにくかった。
そこで左手のための協奏曲(第2番)とカップリングされたCDをしばらく聴き通してイメージをつくってみた。
この作品には『苦難を通って栄光へ』という抽象的な標題が付いていて、それが多分作曲家自身の意思によるものだろうとは思うけれど、ボクはライナー・ノーツを読むのがめんどくさいものだからはっきりわからない。
この辺には国家的政策的な圧力も感じないではない。
とにかく、ヤナーチェクP.O.のフォーマットがかなり詳細な作品像を再現してくれてなかなか面白かった。
ただ、メインはやはり第2番の左手のための協奏曲だろうね。
以前書いたけど、コイツは凄いもの。
この第3番は作品32と壮年期のものだけれど、音楽の骨組みは深化していない。
標題に意味づけられるとボクは聴き方が変わってくる。
正直、近代以降の標題音楽というのがあまり好きではない。
想像力が飛翔せず、作曲者の描こうと思った枠の中に音楽が当為であるかないかという聴き方をしてしまう。
でもまあ、協奏曲なのだからしかめっ面して聴くような音楽ではない。
第1楽章は低くデモーニッシュな序奏から始まる。
闇から光の中へという全体の設計がもうここで十分想像できる。
クリアな分散和音が続き緊張感のあるテーマにつながる。
その過程はグリーグの手法によく似ている。デモーニッシュに闇の底から響く和音といえばラフマニノフの第2協奏曲にもやはりつながるのかも知れない。
作品全体はラフマニノフの抒情性を承継するというのが本筋だろうけれど、この作曲家は懸命なことに技術的には本家に及ばなかったことを自覚していて、自分が弾くためというよりもレベルをラフマニノフクラスに置いたようなふしがある。
全楽章は5つのパートに分かれていておおまかに3楽章形式が成立している。
第1楽章といえる部分は第2楽章と思える部分と切れ目がなく、グラーヴェの開始から決然とした嵐のような部分からラフマニノフの抒情が立ち上がり、短いカデンツァに至る。
そこからアンダンテ。ここで音楽が纏まり高揚する。
躁状態の劇性と鬱状態のノスタルジーが交互に配置され、作曲者の本質的な情緒のスタンスがよく窺える。
緩やかな歌の部分はラフマニノフに似ているというのではなく、楽想的にもそのものである。
繰り返されるロシア的なテーマは単調だけれど美しい。
ただ、音楽のスケールや堅固な高揚感はモノラル録音からは感じることが難しかったけれど、ボクの手許にある2009年のCDからは細かい色彩感が耳に届いてくるので結構楽しい。
最初はぎこちなく、回数聴いているとちょっとクセになる。
これほどモノラルとニュアンスが異なるものも珍しく、この作品の真価はまだ見極められずにいる。
ラフマニノフとほぼ同時代にあった作曲家にメトネルがいるが、メトネルの完全にラフマニノフと対局し、しっかりと大地を踏みしめた姿勢とは異なり、ボルトキエヴィチはもっと自分に素直な生き方をした。
にていようが似ていまいが、彼の意識の中には常にチャイコフスキーがいて、ピアニスト・ラフマニノフがいた。
彼はそれを隠そうとはしない。
抒情の奔流の真っ直中にいて、自分の本筋が決して20世紀の岸辺には届かないものだと知っていたのかも知れない。
この第3協奏曲には着想にユニークがある。楽章を分けることは余り意味がないように思える。
彼の作品の中でボクはチェロ協奏曲をまだ聴いていない。
ラフマニノフが書かなかったジャンルを彼はどのような音楽にしているのだろうか。
気になるんだけど、演奏がない。

YouTubeは第1,第2楽章(こう言っていいものかどうか)
テンポの違いが著しく、色彩感に大きな録音上の隔たりがある。

 CDの演奏の一部はグラーヴェの部分。この次のカデンツァの部分は入っていない。

 

CDはタワーレコードのカタログに見つけ注文しました。アマゾンもHMVもダメでしたね。
Youtubeのピアノ協奏曲第2番のソースは同じ音源だと思います。

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ハゲノヤセウマ

いつも ご訪問ありがとうございます。老人になつて自然と
親しむようになりました。 でも余生からすると 遅かつたです。あせり があります。 

by ハゲノヤセウマ (2012-06-09 19:10) 

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