孤独の歌 [音楽]
シューベルト/アレグレットハ短調D.915
暮れが近づきちょいと忙しさが加速してきましたぞ。更新がちょっと間に合わなくなってきました。何とか…今回は
歌曲『冬の旅』の直後に書かれたか、1827-8年頃のもがいている音がする。
表現として弾いた音形は彼の頭の中では和音の構成ではなく、肉声の歌として響く。
そこから音楽は譜面に写され、歌は彼の技法の中に閉じこめられてゆく。
まるで鮮烈な孤独の雰囲気と共にパウチされたレトルトのように。
ピアニストが鍵盤の上に落とす指先とペダルの爪先に籠めた余韻によって封を切られた音楽は、いきなり自分の孤独を思い出したように自分の居所がわからずに立ちつくす。
安息の袋の中で眠っていたいのに、それは無意識に聴くものの耳を通じて聴くものの意識したこともない、自身の孤独が膝を抱えてじっとしている暗い場所に誘う。
シンプルな音形が白鍵と黒鍵を行きつ戻りつする中に、籠められた音と音の間隙をゆっくりと掘り返してゆくようなリヒテルの演奏は、彼が異常なほどの遅さで弾いたシューベルトの最後のソナタを思い起こさせる。
あの譜面を前に置きながらその譜面の音の間を力づくでこじ開けていたリヒテルの異様な集中力がこの作品の演奏でも聴ける。
音域の狭い音楽だけれど、孤独の幅は異様に深い。
リヒテルの演奏は鬼気迫るけれど、相変わらず録音状態がよろしくない。
ここは音楽の力だけに頼ろう。
ブレンデルの中庸で
Schubert: Piano Sonata, D 959; Allegretto, D915; Piano Pieces, D946
- アーティスト: Franz Schubert,Maurizio Pollini
- 出版社/メーカー: Deutsche Grammophon
- 発売日: 2003/01/14
- メディア: CD
思いがけないほど美しいメロディと、
孤独なつぶやきが聞こえてきます。
by そらへい (2012-12-21 15:25)