チェロで聴いた幻想小品集 [音楽]
シューマン/クラリネットとピアノのための幻想小品集イ短調作品73
もともとはクラリネッター、ヨーハン・コッテとクララのためのプライベートな作品だったらしい。
自筆譜には『夕べの小品集』という名が残されていて、夕暮れのテラスで木々の葉の陰が辺りの暗さに滲んだ頃に薄明かりの中で
親密な時間を過ごすためのものであったのかも知れない。
クラリネットの原曲の方はかなり前に一度書いたことがあるが、もう記憶の外に行ってしまっている。
楽曲は3つの部分に分けられ、それぞれ表情ややテンポが指示されているが、3つの曲は続けて演奏される。
第1曲 静かに、感情を込めて
第2曲 活発に、軽やかに
第3曲 急速に、燃えるように
各曲は独立しつつ、動機的に関連を持ち、静から急動へ道が付けられている。
クラリネットパートはかなりの難物だと聞いている。
ジジイの友人は息継ぎがしにくく、発想は同じ音域の弦楽器のようなものをイメージしたのではといっていたことがある。(もっとも、これは素人のレベルの話だからね。ボクはかなり上手いと思ったけれど。)
で、チェロの演奏を探していてヒットしたのがこれ。
例の共感覚をもつ狼大好きのエレーヌ・グリモーが見た目清楚だが狼のような丈夫そうな顎をもつ(失礼)チェリスト、ソル・ガベッタ嬢とブラームスや、ドビュッシー、ショスタコーヴィチのデュオを演奏したときのライブのプログラムを見つけて聴いてみました。
ガベッタ嬢のチェロはラテン系の吹っ切れたボウイングが切れのある響きを奏出する。
彼女の楽器は1865年製のジャン・バプティスト・ヴヨーム。パリ管のヴィオラスーパーソリスト、ピエール・レネールが同じ年のヴィオラを使っている。ヴァイオリニストのヒラリー・ハーンが使っているのは1864年製。この辺がこの作家の絶頂期なのだろうかね。上薬の色が濃くて響きが豊麗。
ガベッタ嬢は2.3年前からお気に入りのチェリストです。
グリモーもシューマンの五重奏や四重奏で室内楽の中でちょっと今が一番いいのではないかという演奏を聴かせています。
この人は一見華奢ですが、肩からひじの腱が非常に強そうで、ラフマニノフの協奏曲やブラームスの協奏曲で鍵盤を肩から指先まで鍵盤にめり込ませるようなマッシヴな奏法をしたりします。
バッハもちょっとロマンティックで変わっていますが、面白いです。
その時に弾きたい曲を弾くタイプで、型にはまったところがあまり聴かれない。
その二人がアンコールピースに選んだのかも知れません。
この演奏は嵌っています。
強いて言えばシューマンの物狂おしい静穏の孤独感はありませんが、音の後から趨るような情熱が素晴らしい。
ピアノとチェロの位置関係もお互いの音の持つ質感に鍵盤楽器と弦楽器を超えた共通性があるのをおそらくグリモーは色彩の共通性を感じ取ったのかも知れません。
絶妙です。
いい演奏でしたぞ。
- アーティスト: ショスタコーヴィチ,シューマン,ブラームス,ドビュッシー,グリモー(エレーヌ),ガベッタ(ソル)
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2012/11/21
- メディア: CD
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