隠れきっている佳曲 [音楽]
グラズノフ/ピアノのための夜想曲変ホ長調 op.37
6分弱の曲だけれど、短い夏の季節の星月夜。
涼やかに渡る風の匂いの中に仄かに混じる花の香り。
『誰そ彼(たそがれ)』影だけの背の高い若者を待っているテラスの娘。
この作品はちょっと素敵だと思うんだけど、グラズノフのピアノ曲はあまり弾かれないのか、それともボクの探し方が悪いのか、手許にはheliosのソロ・ピアノ・ミュージック3枚組しかない。
それでもボツボツやはりピアノ作品集とかいうものがでているみたいだ。
圧倒的に管弦楽が多く、弦楽四重奏曲や器楽曲は片隅に追いやられている感がある。
YopTubeにしても、弦楽四重奏曲を1曲通して聴けるようなリストは上がっていない。
あまりにも自然に入ってくる1音のなつかしいような響き。
意図されて作曲されたような部分が少なく、開け放った窓に内側に撓むレースのカーテン越しに響くピアノ。
最初のフレーズを立ったまま思いつきでつま弾き、そのまま椅子を寄せて弾き始めたような…
彼の嗜好を感じさせる即興的なフレーズが抒情の中に音と遊ぶように挿入される。
この部分を省略してしまうと作品はリアルな作品の誕生を損なう。
全曲はとても美しい。山っ気のない自然な音楽でした。
YouTubeでは同じ方が自宅で弾いたものがアップロードされています。とても雰囲気のいい演奏ですが、最初の録音は少し音が跳ねすぎていて、明晰すぎてデジタルっぽい。
これは多分にピアニストのせいではなくて録音状況によるものだったのでしょう。
それに、意図的に省略があるようでした。
取り直しの演奏はとても気持ちがセーブされていて、総譜による演奏でなによりも作品が語ってくれます。
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