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形から入れる凄さ [音楽]

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ローベルト・フォルクマン/弦楽四重奏曲第1番イ短調op.9

第1楽章 ラルゴ-アレグロ ノン トロッポ
第2楽章 アダージオ モルト
第3楽章 プレスト
第4楽章 アレグロ インペトゥオーソ(熱烈な)


Volkmann.jpg   静謐で滑らかな序奏から思索的なフレージングが続く。
ヴィオラの旋律は新鮮。
こういう入り方もあるなと、頭に思い浮かんだのはいくつかの後期のベートーヴェン。
アレグロへの緊張感が音楽を聴くものの予想より少し上に引き上げる。
そこから流れ始めた旋律は意外にもシューベルト的でその主題の歌は、これはこの人のメロディアスな特徴をよく表している。
表現の多様さの中にやはりあまり各楽器の音が滲まないギリギリの距離を保っているだけに音楽はクリアではあるが求心力を弱められている。
もう一歩荒々しさと緊張感と躍動感を高いレベルで発揮出来る個性的なクアルテットであれば(例えば旧ジュリアードとか、ラサールとか、アルバンベルクとか)
そこを乗りきる力を発揮して作品をもっと自在に扱うのではないか。
それでも、この作品の懐は深そうだ。
ベートーヴェンという鋳型を自分流に焼き直した凄みがある。
フォルクマン33歳時の作品であり、ドイツロマン派の作曲家が辿った道をかなりの速度で走り抜けている。
晩年のベートーヴェンが生きた時代は少年フォルクマンの人生に重なる。
圧巻は第2楽章。
15分強を要する。かなり緊張力を求められる散文的楽章。
メヌエットが重さに堪えかねたようにアルカイックな旋律を引きずって行く。

アンサンブルの形はまごうことなきベートーヴェン。ただ、彼はボンの巨匠よりも音に対して開かれた世界をもっている。
音楽の中にある求心力の強靱さは比較にはならない。
ベートーヴェンの音楽は幽かに聞こえる音の再現ではなく、裡にある音楽が苦悩のうちに昇華されたもの。
その形がフォルクマンでは美しく処理されていて研磨されている。
削り出しの心の太さは伝わってこない。
けれど、それは完成されていて意思的なものは拡散しているけれど、創ろうとした音楽の凄みは伝わる。
このアダージオはやがて時を経てもう一度評価される時代が来るのではないかと予感させるものがある。
再現部の前の厳粛な沈黙とテーマのもつメロディアスな呟きは呈示されたときよりも明瞭に耳に残る。
苦労してたどり着いたとはいえないかも知れないが、ベートーヴェン的な緩徐楽章の形をここまで作ることはブラームスでもやらなかった。
第3楽章の緊張感のなさは何なの?
プレストの表記はこんな演奏のために記されたのだとは思われない。
唯美的で息づかいがまるでない。
長大なアダージオを受け損ねたスケルツオ。
第4楽章も新しい靴を水たまりに浸けたくない…そんな感じがする用心深さがあって美しいのだけど、整いすぎていてインペトゥオーソという熱狂はない。
ジジイはこの作品に関してはむしろ演奏者の方に共感出来ない無難が感じられてちょっとじれったい。

全曲演奏があるのみでアダージオは8分59秒から16分31秒まである。

筆が入りすぎたベートーヴェンという感じ。でもそれは演奏から来ている印象もある。
あなたはどう思われるか。

フォルクマン:弦楽四重奏曲 第1番イ短調Op.9/同第4番ホ短調Op.35

フォルクマン:弦楽四重奏曲 第1番イ短調Op.9/同第4番ホ短調Op.35

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: CPO
  • 発売日: 1987/10/01
  • メディア: CD





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yakko

お早うございます。
4月3日に牧野植物園へ行かれてたんですね。
うちは 3月23日に竹林寺の霊廟へお参りに行ったあとに牧野植物園へ行きました。その後は行っていません。五台山花巻きのイベントが5月25日まで開催されているので、もう一度行きたいね ! と話しております。いつ行っても牧野植物園は見所がイッパイで楽しめますね(^_^)
by yakko (2014-04-11 08:42) 

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