浅い夜夢 [音楽]
エネスク/フォーレへのオマージュ 1994
とても短い夢。
夜想曲と題されたわけではないけれど、晩年を迎え、作風の角が取れ、研かれたリリシズムが作品を浅い夜の色に染める。
音の言葉は少ないけれど、1音1音のニュアンスをギリギリまで軽く扱いながら夜の濃紺の中に薄く伸ばしてゆく。
刷毛の趨る方向に仄白い無数の感情の襞の残像がゆっくりとたち顕れて滲みながら消えてゆく。
ピアニストという職業人は魔法の指を持っている。
意思的な衣装を纏わず、恩師の作品にあった簡潔と1音が醸す抒情の長さに寄り添うように創り上げた。
選んだ音と空気感は異なるけれど、
持っている抒情に共通点はないけれど、
作曲者は師に思いを馳せている。
回顧的な作品ではあるけれど決してその時代の夜想を描いてはいない。
フォーレの足跡を踏まないように用心深く20世紀の浅い夜に響いてゆく。
ガブリエル・フォーレ/夜想曲第13番ロ短調 op/119
フォーレの夜想曲の到達点。
セピア色に燻された音の詩である。
ホロヴィッツの演奏はちょっと凄すぎるけど、ストイックなほどに一色に塗りこめられている。
2014-05-27 09:48
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