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帰るところ [音楽]

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モーツァルト/ピアノ・ソナタ第4番変ホ長調 K.282

第1楽章 アダージオ
第2楽章 メヌエットⅠ-Ⅱ
第3楽章 アレグロ

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近代から現代の音楽を聴き続けていると、ひとつのフレーズに込められる言葉の密度に飽食する。
重いロマンティシズムや浮遊する魂の揺れに同化していると突然ここに帰りたくなることがある。
いわゆる『デュルニッツ』の求めに応じて作曲された6連作ソナタの4番目。
モーツアルトはこの6曲を別個に仕上げたのではなく、1番から同じ楽譜に自筆で連作している。
6曲を一気呵成に仕上げているのである。
19歳の天才はフォルテピアノの黎明期に絶妙の形で降りてきた。
6曲ならどれでもいいんだけど、ボクは特にこのK282の第1楽章が好きだね。
まだソナタの形式になっていなくてモーツァルトの全ソナタの中でアダージオから始まるのは11番とこの第4番だけ。
モーツァルトのピアノソナタはこの2曲以外どれも第1楽章で走り込んで第2楽章で深呼吸する。
この作品は1音の響きに感応して心が空に向かって開いてゆくようにシンプルな線が弾かれてゆく。
今そこから産まれたように弾かなければならない。
単純さを掌で掬い取って愛おしむように目の前に持ってきたときはもう指の間から生きた音楽はすり抜けていて
掌には『緩』が慎重と結びついて淀んで残っているだけだ。
失礼な話だけれど、この楽章はプロのピアニストよりも子供の弾くピアノに心を奪われることが何度もあった。
同じ感覚をいつもではないけれど、よく受けることがあるのはグルダの演奏だった。
今、できたばかりのモーツァルト。
まったく!
このシンプルさの中に表現の美しさと音の息づかいがピアニストの指を完全に離れきって響いてゆく。


目を閉じて第1楽章を



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そらへい

音楽の前では言葉を上手く紡ぐことができません。
そんなことを言っているとブログも何も成り立ちませんが
黙って耳を傾けていることの心地よさ。
by そらへい (2014-06-27 20:07) 

Silvermac

本日から復帰しました。宜しく。
by Silvermac (2014-06-30 06:16) 

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