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未聴の遺産 [音楽]

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ジョルジュ・エネスク/ピアノ三重奏曲第1番 ト短調 

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第1楽章 アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ
第2楽章 アレグレット グラティオーソ
第3楽章 アンダンテ
第4楽章 プレスト

非常に残念なことに聴き込んでいて惚れぼれしている間に第1楽章から第4楽章まであったデータが削除されていた。
この作品のカタログは作品のすばらしさに比してなんとも腹立たしいくらい稀少である。
このトリオ・ブランクーシという3人のお嬢さんがたの演奏はブラームスもシューマンもすばらしかったし、ライブのこの曲の演奏もすばらしかった。
CDは出ていて。多分YouTubeのソースはそれだったんだろうし、この演奏も同じものだろうね。
入っていないのは各楽章が始まる前にある拍手。
演奏ではそれが煩わしかったのだけど、このソースはそこをカットしているようだ。
もっとも、このト短調はもともと作品のカタログにある20世紀に入ってからのイ短調の3楽章のトリオとは別物で、つい最近発見された楽譜によるものらしい。
作曲年代は19世紀末(1898年)である。
彼は作品を自分の頭の中にしまっていて楽譜にしていないものが幾つもあり、実際に作曲しているということがピアノ等で演奏されるのを多くの人が聴いていて、その存在が確実視されていながら、彼の死と共に失われてきたという。
ピアノソナタ第2番などもそういう位置づけである。
彼の死によって誰も聞くことができないが、存在したのである。
このト短調のトリオは運の良いことに楽譜になっていた。
後期ドイツロマン派のフィールドに両足をしっかり踏ん張っているが、不意に浮き上がる旋律には民族的な憂いがこめられていて、明快な作品である。
ブラームス的であり、しかも良く整理されていて美しく、かの時代の作曲家諸氏の作品と比べても遜色ない。
ここで紹介するトリオ・ブランクーシの紹介ビデオではこの第1楽章が聴ける。
第2楽章にはアレグレットの速度表記があるがメヌエットである。優雅で舞曲の気品と中間部の憂いの粘らない適度なロマンティシズムが作曲家の音楽的な総合力を見せ付ける。
第3楽章のアンダンテはピアノが主導し、緩やかで優しい古典的な主題を聴かせる。その後に入るヴァイオリンとチェロの美しいさ!短いけれど、自然に響いてくる弦楽とピアノの絶妙な距離感が本当にきれいです。
第4楽章はさまざまな要素が聴かれるけれど、ここまで来ると技術的な達成度が生半可ではなくて、音の重なりがとてもブラームスっぽいけれど、個々の弦楽器とピアノのすべてに傑出した才能を持っていたエネスクの音楽の質の高いエンターテイメントが聴けます。
何でこんなにチェロのパートが繊細なのにピアノとヴァイオリンに埋もれないのだろうか。
中間部のフーガの処理はそれ自体を中心に据えているのではなく、あくまでも歌の中の流れに乗っている。

この作品は今のところブランクーシのCDのみでしか聴けないらしい。
YouTubeですべての楽章が聴けなくなった今、その片鱗を第1楽章でちょっと聴いてください。

Trios

Trios

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Zig Zag Territories
  • 発売日: 2012/03/26
  • メディア: CD





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コメント 2

glennmie

エネスクの楽譜、いろいろと欲しいんですけど。
特にピアノ曲は入手困難なものばかりです
楽譜自体存在しないものがあるのですね。
勿体ないですね。


by glennmie (2014-07-11 23:19) 

Mineosaurus

楽譜なかなか難しいでしょうね。輸入楽譜のお店でもヴァイオリンやトランペットとかは見たことありますけどね。Prélude et fugue (1903)については叔母が探してくれといってきたことがあります。フランスにいるのにですよ。
by Mineosaurus (2014-07-12 20:01) 

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