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経年の結晶 [音楽]

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ブラームス/ピアノ四重奏曲第3番ハ短調op.60


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第1楽章 アレグロ  マ ノントロッポ
第2楽章 スケルツォ: アレグロ
第3楽章 アンダンテ
第4楽章 フィナーレ:アレグロ コモド

ブラームスのピアノは独奏で聴く時とアンサンブルの中に入った時とではその役割を緻密に計算されているだけ渋くくすんだ音色が弦楽の醸す多彩に融和して全く別の魅力を発揮する。
この第3番のピアノ・クアルテットは元々第1番や第2番に先駆けて作曲された嬰ハ短調の作品を生来の慎重居士であったブラームスの性格が推敲の果てに作曲から20年を経て改定されて世に出たものだ。
初演はブラームスのピアノとヘルメスベルガー四重奏団のメンバーで行われており、そのメンバーの中では特に名を馳せたチェリスト、ダーヴィド・ポッパー(あんまり聴かれないけれど、ボクはこのチェリストの第2チェロ協奏曲がとても好きなのです。)のパートに非常に大きな役割を与えている。
特に第3楽章の幅の広い豊かな歌はそのチェロの歌なしには成り立たない。
ピアノの第一音から第1主題は上昇することなく、痛切で陰鬱。
死を悼む」調べのような弦楽のトリオにピアノのc音が重なる。
ここから体力勝負のようなパテティック主題が展開されたあと、ピアノの歌う歌にあわせて雲間から光が指すように細かく弾かれる弦楽のまとまりにはベートーヴェンの第7交響曲のリズムが記憶の頭をもたげる。
しかし畳みかけるピアノとアンサンブルの隙間は詰まっていてロマンティックな熱気は内圧を高めながら情熱は逃げ場のない密封状態で自ら焦げ付くまで高まる。
各主題をつなぐ4つの変奏がブラームスの堅牢なロマンティシズムを緩やかに冷却し穏やかに深呼吸をさせる。
聴きようによってはとても耐えられない痛みを伴った葬送の音楽のようにも聴こえる。
第2楽章のスケルツォはスラビックなダンス音楽の原型を保っていてステップやしなやかに回る体の流れをイメージさせる。
でも、それは第1楽章に不要な葬送のイメージを持ってしまうと、横たわる冷えきった青年の屍の周りで踊る死の舞のようにも聞こえてしまう。
要するにその暗さをたたえた音楽であることはロマンティックであることと同じレベルの物語性を持っている。
20年かかった完成までのきっかけと、きっかけから純粋な音楽的完成にこぎつけた時間の中に流れたものは明から暗までの朱夏から白秋までのブラームス自身の心の有り様を指しているのかもしれない。。
その第2楽章があってこその第3楽章のアンダンテ。
この音楽は素晴らしいよ。
ボクのチェロ好きが余計にそう思わせるのだろうけど、ホ長調の瞑想的なチェロの旋律はブラームスのチェロを扱った音楽で白眉だね。
YouTubeの中で3楽章だけ観ることができる。
ゴーティエ・カピュソンの陶然たる表情が込めた感情がどのへんの空間にあるかわかるような気がしてつい見とれてしまった。
ヨーヨーマもこういった表情をするけれど、正直このアントニオ・バンデラスに貴腐ワインを飲ませたようなお兄さんの表情には勝てないね。
頭ははげちゃってるけど、ヴァオリンはサルバトーレ・アッカルドらしい。
ピアノはメナヘム・プレスラー。
この人はピアノトリオが長かった人でとても素晴らしい。
渋いアンサンブルが弱音になった時、軽々と底から浮き上がってくる音色が絶妙の呼吸ですね。
ヴィオラは…わかんないな。
でもアッカルドのパートに重なってくときの微妙な音色のやりとりは緻密で素晴らしい、チェロが音を聞きながらそこをヴィオラが抜けてくるコーダ近くの部分はほんとうに美しい。交響曲第1番のヴァイオリンと同じ手法ですね。
画像が見えるってことは以前ほど文章で音楽を聞かそうという力味がなくなったと自分では思うけど、余計な想像が羽ばたいてしょうがない。
えーと、そうそう第4楽章もエネルギッシュなんだけれどピアノのなんていうか弦楽器で言う無窮動的なリードに合わせてヴァイオリンが歌い上げながら高まってゆく時にピアノに現れてくる音形はベートーヴェンのいわゆる運命のリズム。
経過部で明確にそのリズムが総奏され、ブラームス特有の憂いのアレグロに加わるベートーヴェン的ベクトルが説得力の大半を占めています。
まるで合作のような…


それぞれの楽章が魅力的で複雑ですが、ここは出色のこの方たちの一期一会を

第2楽章 アンダンテ

ブラームス:ピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲第3番

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  • 出版社/メーカー: 日本コロムビア
  • 発売日: 2013/06/05
  • メディア: CD

ブラームス:ピアノ四重奏曲第1番、第2番、第3番

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  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2007/12/19
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ブラームス:ピアノ四重奏曲第1

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  • アーティスト: ブラームス,ギレリス(エミール),アマデウス弦楽四重奏団員
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kontenten

【お知らせ】
Mineosaurusさんに可愛がって頂きましたカナが
昨晩、亡くなりました。
謹んでご連絡申し上げます。
4月くらいから体調が良くなく、先月末くらいから
突然元気になったのですが、本当は良くなかったようです。
カナは亡くなりましたが、他の猫たち共々
これからもご愛顧下さいますよう、お願い申し上げます。
by kontenten (2014-11-13 09:02) 

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