黴の匂いの中から [音楽]
ロベルト・フォルクマン/チェロ協奏曲イ短調op.33
第1楽章 アレグロ モデラート
第2楽章 アレグロ ヴィヴァーチェ
第3楽章 アレグロ ヴィヴァーチェ
第4楽章 ウン・ポコ モデラート
連休も終わった。
いくつか書きたい日常もあるけれど、決算期の今はちょっと疲れてて集中力がない。
4月から5月にかけて公私共にさまざまな出来事があってようやく落ち着いてきた。
今日はやっと取れた休日。
とりあえず、気分を変えて音楽です。
数年も日を浴びず空気の止まった中に眠っていた音達が冒頭の旋律の中に立ち上がる。
チェロの響きの何処かなつかしい低音には弓が低弦に触れるたびに光の中に微少の埃を舞い上げる。
コンパクトで彼以後の異国の作曲家が目指したようなスケールを追いかけた音楽ではないけれど、目を覚ました音は整然としていて魅力的である。
ヴィルトゥオーソのために書かれたようで技量を聴かせる部分が多い。
音楽の繋がりはチェロを中心に管弦楽は添え物のようなヴァイオリンで言うとパガニーニのそれのような部分が多く、
正直あまり好みではなかったけれど、チェロの独奏に数瞬合わせる管弦楽の旋律は美しく、錬られている。
この第1楽章にこの管弦楽の序奏があれば聴く方の集中は『20%がとこ違うのになあ』と思ったりする。
同じロベルトであるシューマンのチェロ協奏とイメージが似ていなくはない。
全楽章は続けて演奏される。
演奏者によって17分から19分強まで、いくつかの録音があるけれど、YouTubeではそのうちの2曲が聴ける。
ボクはどちらかというと遅い方がうまくいっているように感じるね。
引き飛ばさず、オケとの感覚をよく打ち合わせた上でバランスに重点を置きつつチェロはよく歌っている。
このダニエル・ミュラー(腕時計ではない)・ショットというチェリストはイケメン君でヨアヒム・ラフなんかのチェロ協奏曲も弾いていた。
当時は長髪を後ろで括っていて白面の美男だったけど、何年かの年を経て顔つきにも影が差して深みが出てきた。
演奏も比例しているね。
技術的には圧倒するものを持ちながら非常に知的にコントロールしている。
オケとチェロ間合いの中の息づかいが絶妙でこういう気の使い方をすると音楽は自分で誇りを落として輝き始める。
第2楽章のアレグロ・ヴィヴァーチェの独奏部は無伴奏の深さすら感じさせる。
1727年製のマッテオ・ゴフリラーの細身で反応のよい音は彼の知性を乗せるのに最適の楽器なんだろうね。
演奏は気に入った。
フォルクマンの作品も例によって室内楽から聴き始めた。
弦楽四重奏曲に流れるベートーヴェンとシューベルトの特異な混交はここには聴けない。
ボクはもう一度室内楽に戻っていこう。
- アーティスト: シューマン,R. シュトラウス,フォルクマン,ブルッフ,クリストフ・エッシェンバッハ,北ドイツ放送交響楽団,ダニエル・ミュラー=ショット (Vc)
- 出版社/メーカー: ORFEO
- 発売日: 2009/12/25
- メディア: CD
- アーティスト: Albert Dietrich,Friedrich Gernsheim,Robert Schumann,Robert Volkmann,Hannu Lintu,Berlin Radio Symphony Orchestra
- 出版社/メーカー: Hyperion UK
- 発売日: 2007/03/20
- メディア: CD
Most Beautiful Cello Concertos
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Hanssler Classics
- 発売日: 2010/04/27
- メディア: CD