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マイルストーン [音楽]

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リヒャルト・シュトラウス/弦楽四重奏曲イ長調op.2

第1楽章 アレグロ
第2楽章 スケルツォ:アレグロ モルト
第3楽章 アンダンテ・カンタービレ モルト
第4楽章 フィナーレ:アレグロ ヴィヴァーチェ

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習作というには練り上げられている。
シューベルトや何よりもモーツァルトの霊感を借りたところもあり、弦楽四重奏曲は17歳の時のこの作品で自分の音楽表現が先人以上のものにはならないと覚悟したのか。
室内楽という分野が自分の居場所ではないと考えていたのか、チェロ・ソナタやヴァイオリンソナタも似たような年代で終わっている。
ドビュッシーやラヴェルが残した1曲と同じ数ではあるが、やはり才能の趣が大きく異なり、自分の学んできたアンサンブルで可能な創造が過去の先人たちを通過してきたものに他ならないという意味が大きいように思う。
つまり、なんだ、『ちょっと創ってみました』的な。
それでもね、第3楽章は美しいね。標題音楽以前の彼の血の中にある音楽表現で最もいい流れを聴かせてくれている。
チェロが雄弁に歌う部分のシューベルト風の歌は彼岸の向こう側に立つ自分の姿を見つめるような悲しみには届かないけれど、そういう静謐な音楽をそこで生み出せる才能のきらめきを見せて余りある。
以後この分野を振り返らないシュトラウスのアンダンテは歌曲や後の交響詩の中の弦楽合奏に姿を変える。
残念なのは演奏者の熱が旋律を美しく追うだけにとどまっていて第1楽章からフィナーレまでの起伏に必ずしも共感しきっていない気がすることだ。
「17歳の音楽にそんなに頼り切るなよ」と呟きたくなるね。


YouTubeではこの第3楽章。もう少しメリハリがあれば第1楽章もいいのだけど。

映像はスペイン、カタルーニャの同時代の画家フランセスク・マリエラの「Winter 1882」
彼女が両手を突っ込んでいるのがにゃんこの毛の手触りによく表現される『モフ』の原型。
16世紀のからの女性の防寒具である。

ロータス・カルテット~オペラハウスを席巻した3人の作曲家の弦楽四重奏曲~

ロータス・カルテット~オペラハウスを席巻した3人の作曲家の弦楽四重奏曲~

  • アーティスト: R・シュトラウス・ヴェルディ・ロッシーニ,ロータスカルテット(小林 幸子)(藤森 彩)(山﨑 智子)(マティアス・ノインドルフ)
  • 出版社/メーカー: ナミレコード
  • 発売日: 2014/05/25
  • メディア: CD

String Quartet/Metemorphose

String Quartet/Metemorphose

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: MD&G Records
  • 発売日: 2003/02/25
  • メディア: CD


Kreisler/Strauss;String Qau

Kreisler/Strauss;String Qau

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Arabesque Recordings
  • 発売日: 1993/08/04
  • メディア: CD

Quartet String/Quartet String

Quartet String/Quartet String

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Hyperion (UK)
  • 発売日: 1989/05/01
  • メディア: CD





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Blogの中の猫たち-185 [Blogの中の猫]

ザッキーハウス
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K.Miyazakiさんの実家のチャオちゃん

えー、このシチュエイションは初めてだね。
でもボクはこの絵の元になった小さな写真がとても気に入ったのでした。赤と金の絨毯に長々と体を伸ばした彼女の瞳は金色でそこから彼女の空間がその瞳の色に支配されているような、光があふれている写真でした。
野性的な目の力と静が一瞬でどうに変化するフレキシブルな筋肉がしなやかな体毛の中に隠れている。
その静の中の躍動の気配が好きです。(この次に寝ちゃってるかもしれないけれどね。静の次にさらに深い静。それが猫だね。)

対象が小さく、画像の詳細がよくわからないので体色や額のスジ模様については他の写真を参考に、色目もそこから採ったりしています。

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AscentivのSweep系のソフトを使ったためか、その後ユーザープロファイルが壊れたらしく、起動する度に使い慣れたソフトやパソコンのディスクトップが全て初期化されてしまい。使う度に元に戻さねばならず、面倒くさいったらないね。
復元をやろうとしても、WindowsXPの環境も使用するために2つのOSを入れている関係でスペースを確保するためにバックアップを削除していたものだから、うまく機能しない。
以前XPの時にも一度このソフトで不具合が起きたが、その時は復元できるバックアップが残ってた。今回はダメ。
レジストリを触るのもちょっと怖いしねえ。
ボクのパソコンを長年制作してくれるところへ持ってゆけば直してくれるだろうけれど、その暇がない。
当分不便のまま絵を描いたりしている。
オリジナルのカラーパレットも筆もすべて初期化されるけれど、すべてバックアップを取ってあるのでそこから読みこめばいいんだけど、ほんとに面倒だね。

ま、とにかくそのような環境で何とか仕上げたのでした。

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その時流していた音楽はヤナーチェクのOn the Overgrown Path
『茂みの中の小径』全集ヤナーチェックのモラヴィアの民族的色彩が強い第2巻を。





ヤナーチェクの音楽は同じチェコでもドヴォルザークやスメタナのドイツ・オーストリアの様式に則った上で民族を謳歌するボヘミアと異なり、様式よりも感性がモラヴィアの音楽を導く。
スラブ色は意識せずとも情景音楽のような自由の中に自然な深呼吸のように吐き出している。

タイトルバックの絵は初期のゴッホの絵で白い服を着た少女とこの絵の少女とか森と女性を描いたものがいくつかある。
彼の晩年の色遣いからはかなり違っているけれど、音楽のいくつかのシーンにはピッタリですね。 




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音楽が留める涙 [音楽]


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ヤナーチェク/ アンダンテ

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弦楽合奏のための楽曲を彼はいくつか残している。
その幾つかはとても美しく、彼のオペラ『利口な女狐の物語』の中のアダージオに見せられたボクは一時期彼の弦楽合奏曲を探しまわって聴きあさった。
アンダンテでは牧歌的な弦楽オーケストラのための『牧歌』の第1曲が美しい風景を描きこんだおだやかな望郷的作品でボクは好きなのですが、
ここで聴くアンダンテはそれとは違う。
上記の作品がドヴォルザークを思わせる雰囲気を持つのに対し、この曲は悲しむべき闘いの跡の黒く焼け焦げた匂いが鼻を突く中に煤だらけの顔を上げて立っている若い母の姿を思い浮かばせる。
彼女は決して為す術もなく呆然と立ち尽くしているのではない。
失ったものの大きさを知っている。
彼女が待ち続けた者の帰郷がただの望みになったとしても、それでも
彼女の心の芯の中に勁く、しなやかに残っているものは失われることはない。
愚直なまでの現状肯定とそこから飛躍する力が、瞳の奥に光を宿している。
涙は瞼の縁にとどまり、頬を伝うことはなく、やがて煙に燻されて揮発する。
灰色の厚い雲間に澎湃と光が射し
焦げた大地に斜めに影を落としたその母の足元に同じ覚悟の目をした幼子が彼女の粗末な上着の袖をしっかり握りしめて
ただ黙って立っている。
彼女の右手はすべての思いを伝えた後の安息の優しさでその小さな頭に置かれ
自らと子供のために言い聞かせる。

「Wir leben hier」









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