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断固たる19歳 [音楽]

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ジョルジュ・エネスク/ヴァイオリン・ソナタ第2番ヘ短調op.6

第1楽章 とてもいきいきと
第2楽章 静かに
第3楽章 速く


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1899年、彼が19歳の時の作品。
全盛期に書かれた第3番の高みにはないけれど、いや、この年令で書かれたヴァイオリンの作品としては抜群の完成度。
彼がパリ音楽院に入ったのが15かそこらで、これはその4年後に書かれている。
マスネやフォーレに支持した作曲部門での近代フランス音楽の影響下にあったのは一聴して理解できるけれど、印象派的な浮遊感とグルービィな空気感よりも明確に作曲技法と演奏技術の現実的融点を手に入れている。
晩年彼は盟友であった夭折のピアニスト、ディヌ・リパッティとこの第2番も実演の録音を残している。
その第1楽章は抜きがたい憂いが清新なピアノで洗われながらも蜘蛛の糸のように漂うヴァイオリンの旋律に繰り返される。
フレージングにフランス音楽の香りは漂うけれど、曖昧さはなく、点から点へピシリとした意思が音楽を紡いでいる。
情景は意識の外に追いやられ、イメージは不思議とモノクロームでエゴン・シーレを眺めているような思いをさせる。抒情的で内湛んだ主題はヴァイオリンに顕れる度に深化し、ピアノのクリアな波の上に浮沈を繰り返しては命のように蘇る。
技術的にもそう単純とは思えないけれど、全てが自発性に満ちていて音楽そのものに寄り添う。
高い技術レベルに作品の質の高さが融け合う。
こういうのが妥協のない演奏家が作る楽曲というのだろうか。
第2楽章はなんとも美しい。
表面的なものではなくて第一楽章の主題は旋律面をいっそう浮き立たせて静謐な、思いを押し殺して勁く歩む。
ピアノが前に出るとそこで素晴らしい協奏が生まれ、その後のピアノによる澄んだ表情が浮き上がる。ヴァイオリンは遠くから囁きボクが最も好きな部分へ入る。
絶妙のアンサンブルにヴァイオリンのトレモロが嫋々と流れ、長いフレージングが次第にテーマに戻ってゆく。
なんていうか、すでに頭のなかで音楽は出来てしまっていたのだろうね。
それから考えると幾通りもの演奏っていうのはあまり聴けないのかも知れん。
最終楽章は思い返したようにテクニカル。
ピアノはヴァイオリンを支えるリスムに徹し、
ヴァイオリンはテーマを繰り返しながら気分は全く異なり、変幻自在で即興的。
うん。例えばいくつかの約束事を決めておいてその間をつないでゆくヴァイオリンは霊感の赴くままに走っているような、そんな行書的な速度感と爽快感がある。
非常に舞踏的で煽動的である。
こういうところがヴァイオリニストとしての彼の天賦の才。
マスネやフォレの音楽ではないね。滲んだところが一片もない。

汲み尽くせないね、この先生。


YouTubeには上述した本人とリパッティの演奏もあるけれど、第3番同様現代の演奏家のものをチョイスした。
第2楽章を





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