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幼稚園時代 [One's Boyhood story]

先日ボクの幼稚園時代の先生が長寿を全うされて逝かれた。
幼稚園から問題児だったとのことで、ボクは当時のどの先生の記憶にも残っていたらしい。
当時の記憶を辿って車を走らせてみたが、ボクの記憶の中には2階建ての木造の園舎があり、前庭には砂場があり、その中には木製の高い滑り台があった。
向かって左側には4つ並んだブランコがあり、その真ん中からボク達は靴を脱ぎ散らかして広い講堂を走り回った。
窓のすぐ外には小川が流れていて(おそらく灌漑用水路だったと思う)窓から釣り糸を垂らすと小さなフナが釣れた。
でも、教えられた場所には煉瓦造りの家が建っていて、わずかな敷地の輪郭に昔の面影が感じられる程度だった。
その家の裏手にはまだ灌漑用水が流れている痕跡があるが、コンクリートで蓋がされており、『小川』然とした趣はもうなく、下水路のような感じだった。
「やめなさいS君。やめようね。」
必死に止めようとして声をかけながら近づく先生の気配を背中に受けながらボクは二階の道路沿いの窓から、滑台の踊り場を狙って飛び降りた。
窓から下をのぞくと砂場が見え、その真ん中には手が届きそうな距離に滑り台の高い踊場があった。
ボクはそこに飛び移ろうとしたのだ。
「できないだろう」と友達にそそのかされたのかも知れない。
以前ボクはやはり友達にけしかけられて、ドングリを掌一杯食べたことがあった。
それは苦く、まずかったが、ボクは意地になって食べた。
その日ボクは帰りのバスの中で大量の血が混じった嘔吐を繰り返し、バスガイドさんが貧血で倒れたという事件を起こしていた前科があった。
で、子供の浅知恵である。単に飛び移れそうな感じがしただけで、実際には窓からその滑り台までは
2メートル以上の間隔があり、ボクは先生の悲鳴を聞きながら、ジャンプし、飛びおりた先には滑り台の踊場はなく、そのまま下の砂場に両足同時に大きな音を発てて着地した。
何事もなかった。足も折らなかったし、膝も足首も全く問題なかった。ただ、上履きを履いた足の裏がひりひり痛かったことを覚えている。
先生は窓からのぞく気力もなく、その場にへたり込んだそうだ。
ボクは罰として暗くて狭い職員室横の倉庫に入れられた。
でも、それは先生方の大きな間違いだった。
ボクとっては、その倉庫は入りたくて入りたくてたまらなかった場所だった。
そこにはみんなが大好きな音楽のレコード(落とすと割れる硬いやつ)やたくさんの紙芝居が整然と並んでいて、幼稚園の宝の部屋であった。
ボクの好奇心はとどまるところを知らず、ナショナルの豆球がつく小さな電灯のスイッチを入れ、1日一話の紙芝居を片っ端から読みあさった。(当時ふりがな付の紙芝居を読むことぐらいは朝飯前だった。)
何時間かして園長先生が幼稚園に帰られ、I先生は事情を話し、ボクに罰を与えていることを報告したという。
園長先生はこう言ったそうだ。
「ああ、S君にそんな罰を与えたって、魚を水に返すようなもんですよ。」
園長先生は急いで倉庫の鍵を開け、中をのぞき込んで(ちょうど私が電灯で『カモメの水兵さん』という紙芝居を読み終わったところだった。)、「ほら、ごらんなさい。」と言った。
倉庫の中は読み散らかしてバラバラになった紙芝居の山があり、床に落ちて割れてしまったレコードが散らかっていたという。
それから、毎日、先生達は紙芝居のストーリイを先にしゃべってしまう問題児に手を焼かれたそうだ。
ボクは家に帰るまでの車中でもう40年以上も前のことを鮮やかに思い出していた。
小川を泳ぐ蛇を捕まえ、一階の講堂床に這わせ、先生達の大騒ぎを生んだこと、いつも上履きを左右逆に履いていた白いソックスの女の子に(不思議と顔を思い出せない。)ぼくはかすかにあこがれを抱いていたlこと。
あの頃の田舎の幼稚園は新品の教育を受け、実践の場に出た若い女先生達と自然の中で育った我々原始の子の日々の戦いだったのだろう。


  I先生ありがとうございました。


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コメント 2

こいし

こんにちは♪
豪快な経歴の持ち主でいらっしゃるようで‥(^^)
無事卒園の日を迎えたときには、先生もさぞ感激されたことでしょう。(同時に寂しくなったでしょうね。)
by こいし (2007-09-02 07:10) 

Mineosaurus

読んで下さってありがとうございました。恐竜じじいことMineosaurusと申します。昔は体罰なんて当たり前でしたね。今やったらとんでもないことになるでしょうけど。先生方と親たちの関係ももっと深く信頼は厚かったようです。
by Mineosaurus (2007-09-02 20:28) 

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