ブラームス/聴き比べ--ヴァイオリン・ソナタ [音楽]
ブラームスのヴァイオリンソナタで一番好きなのは第3番です。
この二短調のピアノとヴァイオリンのためのソナタはその纏まり、決して不健康にはならない仄暗いロマンティシズム。
内に燃える炎の濃さ。
そして何よりヴァイオリンとピアノ双方に求められる技量の高さ。
ただ、高潔であるただ、スケールが大きいと言うだけでは飽きてしまうものだけど、凝縮してゆく楽想の緻密さを弾ききれるだけの濃密な情熱。
冬以外の季節にはあまり聴かない作品なんだけど、聴き始めると同じフレーズに引っかかって、とっかえひっかえCDやテープを聴き直す。
この作品ではナタン・ミルシティンのヴァイオリンにホロヴィッツのピアノという組み合わせがある。
モノラルだけど、ミルシティンのヴァイオリンがその全盛期にどんな輝きを持っていたか、ホロヴィッツの青白く光り出すような磨かれぬかれたピアニズムとともに素晴らしい聴き応えのある演奏。
美しさというなら、あまり考えて弾いてるように思えないくらいさりげないパールマンの天真爛漫な美しさが図抜けている。
アシュケナージのピアノも美しい。録音状態もいいのだけれど、第2楽章のアダージオ以外はあまり聴かない。
もう一つ、オイストラフがリヒテルと録音したモスクワライブがある。
時間的にはミルシティンの演奏よりも5秒ほど短い。
つまりほとんど変わりがない。
引っかかるようなブラームス独特のリズムの畳み込みを強弱のニュアンスの綾を織り込んで分厚く聴かせてゆくのはやはり、オイストラフとリヒテルのコンビが一番あっているみたいだった。
リヒテルのピアノはヴァイオリンに合わせているような風には思えないんだけれど、出だしの呼吸だけで全体を設計している。
ホロヴィッツのような特徴的なピアニズムではないけれど、一音の説得力は甲乙付けがたいね。
ボクはギドン・クレーメルというヴァイオリニストが好きなんだけれど、アファナシェフと組んだ全集ではこの第3番の演奏は何故かかったるい。ピアノのテンポがスローなのか今ひとつ煮え切っていない。
ブゾーニは良かったんだけどなあ。残念。
音楽が楽しめているのはなんといってもルービンシュタインのピアノとシェリングのヴァイオリンだな。ボクはルービンシュタインのピアノの音が好きなので少し明るい感じがするけれど厚くて滑らか。シェリングのヴァイオリンには気品があります。
ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第3番二短調OP.108
第1楽章 アレグロ
第2楽章 アダージオ
第3楽章 ウン・ポコ・プレスト・エ・センティメント
第4楽章 プレスト・アジタート(ロンド)
- アーティスト: ホロヴィッツ(ウラディミール) ミルシテイン(ナタン), ミルシテイン(ナタン), ピアティゴルスキー(グレゴール), ホロヴィッツ(ウラディミール), フィラデルフィア・ロビン・フッド・デル管弦楽団, ライナー(フリッツ), ブラームス
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN
- 発売日: 2002/01/23
- メディア: CD
- ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集
- アーティスト: ルービンシュタイン(アルトゥール) シェリング(ヘンリク), シェリング(ヘンリック), ルービンシュタイン(アルトゥール), ブラームス
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN
- 発売日: 2007/11/07
- メディア: CD
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