室内楽の宇宙-打楽器アンサンブルの中のピアノ [音楽]
これは室内楽と言っていいのかいまだに迷うのだけれど、そもそも室内楽というジャンルそのものが曖昧なもので、戸外か室内かと言う区分けではないと思うのだから関係ないか。とも思う。
この曲はいつも何故か朝時間がない時に限って第2楽章を聴きたくなる。困ったものだ。
バルトーク / 2台のピアノと打楽器のためのソナタ SZ 110
第1楽章:アッサイ・レント~アレグロ・モルト
第2楽章:レント・マ・ノン・トロッポ
第3楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ
バルトークはその最晩年の円熟期にピアノ2台を室内楽に持ち込み、3基のティンパニ、木琴、2種類の小太鼓、同じく2種類のシンバル、大太鼓、トライアングルそれにタムタムと実に9種類の打楽器を加えるこの曲を作った。
ピアノ以外の打楽器は少なくとも2人以上の奏者が受け持ち、ピアノを支えるリズムをサポートし、打音の細かいドットを非常に繊細且つ緊密に繋げてゆく道化師のような役割を持つ。
打楽器が生み出す精緻きわまりないハーモニー。
旋律線のないところにボクらの耳を通して明らかに浮かび上がる響きの印影がもたらすメロディのような美は何なのだろう。
バルトーク特有の緩徐楽章の静謐さ。
一つ一つの音はメロディとして繋がってはいないのだけれど、音符と音符の間には確実に無音の歌がある。
こういう音楽を現代的と表現するならそれはおかしい。
バルトークの音楽は大衆を捨てていない。ボクの耳はベートーヴェンに、モーツアルトに傾ける角度でこのバルトークに向いている。
引き締まった無駄のない造形の中に、ほんのかすかにハンガリーという国の響きがある。
1音が持つ美しさが沈黙の中でこれほど重く聞こえる音楽は他の作曲家にはない。
この曲も、次が生まれることのないユニークさではなく、次が必要でないほどに満たされている。
後にバルトークはこの曲を元に2台のピアノのための協奏曲を編んだけれど、原曲の持つ静謐さは損なわれている。
ピアニストとしての才能は1905年のパリのルービンシュタイン音楽コンクールでウィルヘルム・バックハウスの後塵を拝した。
そして、作曲部門では入賞すらしなかった。
しかし、その後の成功はその結果を完全に裏切っている。
バルトーク : 2台のピアノと打楽器のためのソナタ Sz110
- アーティスト: アルゲリッチ(マルタ), ラヴェル, バルトーク, フレイレ(ネルソン), ガッジーズ(エドガー), ザードロ(ペーター)
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2000/08/02
- メディア: CD
バルトーク:2台のためのピアノ、パーカッションとオーケストラのための協奏曲
- アーティスト: カティア&ラベック(マリエル), バルトーク, ラトル(サイモン), グァルダ(シルヴィオ), ドゥルーエ(ジャン=ピエール), バーミンガム市交響楽団
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2007/01/24
- メディア: CD
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