ヨアヒム・ラフ応援団-3 [音楽]
単一楽章と捉えていいのだろう。
『春』という気分を音楽に合わせたらこうなるんだろうな、という非常に情緒的な作品。
短いオーケストラの序奏の後ピアノが駆け込むように割って入り、重層的な演奏とはならず、制止したオーケストラの沈黙の中でピアノが優雅な歌を奏でる。
それはピアノ曲というより、まるでリートの様にメロディアスだ。
親しみやすく、美しい。
この主題がオーケストラに移り、やがて、曲はチェロソナタになる?
そうなのです。
オケが沈黙し、ピアノの涼やかなオブリガードの上でチェロが朗々と春を歌うのです。
でも、決してそれはピアノとチェロの二重協奏曲にはならず、チェロはその歌が終わると管弦楽の中に静かに埋没し、ピアノ協奏曲に戻ってしまうのです。
なんじゃ?こりゃ?
それでも、そのフレーズは素晴らしく美しい潤いのある抒情に充ちています。
次第に厚みを増してくる管弦楽の中をあまり和音を強調しないパッセージが何度も彩りを替えて流れ、重たくなるのを嫌うかの様に、でも華美でなく、優しげで親しみのあるオーケストラとのやりとりがこの作品のスケールを奪っているけれど、他のどの作曲家にもない独特の旋律線は魅力的です。
車の中でボクはラフマニノフの3番とこの曲を聴き比べてしまいました。
心の闇が整理されきった厚い和音を通じて、深く穿たれた暗い穴の中から寂寥、空無、哀惜と愉悦…各々の色彩が交互に姿を見せ、夜の歌(ナハト・ムジーク)を歌うラフマニノフの後でこの曲を聴くと、実に単純でわかりやすい。
でも、稚拙であるというのではない。
この曲はこういう聴き方をしてはいけないんだろうね。
ヨアヒム・ラフは40歳くらいからの遅咲きであり、20年くらいのキャリアで作曲を終えている。
遅咲きの彼が抱え込んでいた歌は、いま、ようやく外に向かって咲きつつある。
35歳ヴェスヴァーデンでの作曲。
コンチェルトシュテュックという用語はラフが初めて使用したとのことです。
ショパンよりも管弦楽が充実している分、もっと聴かれてもいい作品であると思いますね。
Raff: Concerto for piano in Cm; Ode to Spring Op76
- アーティスト: Joseph Joachim Raff,Jost Meier,Basel Radio Symphony Orchestra,Peter Aronsky
- 出版社/メーカー: Tudor
- 発売日: 1998/08/25
- メディア: CD
Busoni: Concert Piece in D minor/Raff: Concert Piece in G major/Piano Concerto In C minor
- アーティスト: Ferruccio Busoni,Joseph Joachim Raff,Lawrence Foster,Lausanne Chamber Orchestra,Jean-François Antonioli
- 出版社/メーカー: Claves
- 発売日: 1988/01/01
- メディア: CD
ブゾーニの協奏曲も聴ける。
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