フォーレ-渋すぎる? [音楽]
第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ
第2楽章 アンダンテ
第3楽章 アレグロ・ノントロッポ
第1番から40年を経た晩年。
かつては100の言葉で語ったものが、ここでは10の言葉で語られるように簡潔で聴く者の集中力を歌から音の持つ思索に移らせる。
ピアノのグリッサンドの上で奏でられるヴァイオリンの歌はそれ自体では決して口ずさみようのない心の幾重もの綾が織り込まれ、華やかな色彩よりも沈潜するモノトーンの回想がその場を占める。
ヴァイオリンの奏でる旋律は1人の女性の心と表情を映すように変化し、流れ、蟠る。
後悔なく老いた人に捧げられたように歌は閉じる。
夢のように定かでない木漏れ日の中の林を抜ける。
歩くような速さでもうどこへ行くのか、どこへ行き着くのか、知り尽くしている二人は幼い頃に勇気をふるって抜けた林の中を、懐かしい暖かさを覚えながら、語ることもなく互いの歳を経た手指を愛撫する。
重たい歌が流れるけれど、そこには哀しみはなく、苦悩もない。
乾いた下草は枯れた落ち葉の下に眠り、一歩の重みを柔らかく押し返すように二人の歩みを助けている。
老いが素直さを引き出し、日々の時間から離れた、互いが向き合う時間を作っている。
潤いが失われたかの人の頬にかかる白い髪。
彼の目はその頬をかつてのふくよかなかの人の思い出に寄せる。
男の足元がふらつくたびに繋いだ老いた手のひらにお互いの力を感じながら光の差す方に歩いて行く。
一片の後悔もなく今は全てがお互いだけになったように、時間は二人をどこまでも受け容れている。
若い時間は終わった。
やがて終わろうとする時間は永遠へつながっている。
- アーティスト: プラネス(アラン) カントロフ(ジャン=ジャック),フォーレ,カントロフ(ジャン=ジャック),プラネス(アラン)
- 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
- 発売日: 2006/12/20
- メディア: CD
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