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バルトークの真髄 [音楽]

バルトーク/ピアノ協奏曲第2番SZ95


第1楽章:アレグロ
第2楽章:アダージオ~プレスト(スケルツォ)~アダージオ(コラール風)
第3楽章:アレグロ・モルト~プレスト

作曲者の真に伝えたいところは、作曲者が逝ってしまった後でははかりがたい。
でも、バルトークがそのピアノの打鍵において、打楽器的要素を常に念頭に置いた書法を展開してきたのは周知の事実だ。
彼の音楽、特にピアノがオーケストラの一部となるものから、オーケストラと対峙する形を取る協奏曲に転じた時、そこには爆発的な打鍵が繰り出す音量と等質のオーケストラの技量が求められ、そのいずれかに於いて、残念ながら第3番を除いて、ボクは満足できるものを見いだせなかった。

ポリーニが弾くまでは、である。
作曲者によればこの曲は難解、複雑、晦渋、凶暴を極めた第1番からかなりソフィスティケイトされたものに仕上がっているとのことである。『どの辺が?』と言いたいところだけれど、確かに断片的な旋律にしても、その凄まじい和音塊の炸裂にしても、僅かながらコントロールされた軽妙さがあると言えば、そうだね。と、いうしかない。
明快で旋律的であることは確かだろう。
しかし、そうは言っても、この曲は特にピアノ技法については超絶的であり、難なく弾けることでは足りないパワーと凄絶な濁らない強打が求められる。
古今のピアノ協奏曲の中でも、まず、これほどの難儀な曲は珍しい。
ラフマニノフの第3番のような抒情の中の悪魔的な技巧ではなく、技巧そのものが力=パワーに裏付けられることが求められる。
残念ながら今のポリーニにこの曲を弾ききるだけの技量が残っているとは思えない。
最近の彼の演奏は残念ながらかつての強さと光り輝くピアニズムを失ってしまった。
でも、これは違う。この、アッバード指揮する機能的オーケストラとしては当代随一といっていいシカゴSO.をバックにしたポリーニのバルトークはこれがリリースされた時点で、これ以前の名演奏は全て歴史の片隅に押しやられてしまったと言っても過言ではないと思う。
とにかくこのアポロ的でドライで吹っ切れた爽快感は、音楽が与える類のものを超えている。
音響の愉悦である。
ポリーニというピアニストの絶頂がこれほどのパワーと正確さと理知的な凶暴性を持つものであり、なおかつ、その断片的な旋律の歌い方にイタリアの血の濃さを感じさせる演奏はかつても以後もなかったといっていい。
これは凄まじい演奏です。凄まじいのにコントロールされているからこれは音楽たり得ているのです。
第1楽章は弦楽は使用されません。第2楽章は逆に金管楽器が封じられています。その断片的な抒情のもつ、音の伝える内省の美しさは絶品です。
圧巻は第3楽章の原始的とも言えるリズムの吹っ切れ方です。凄絶なカタルシスを味わうことになりますね。
ボクのバルトークは第3番に関してはやはり、フリッチャイとピアノのゲーザ・アンダのコンビですが、この第2番についてはポリーニと言うしかないです。

バルトーク:ピアノ協奏曲第1番、第2番

バルトーク:ピアノ協奏曲第1番、第2番

  • アーティスト: アバド(クラウディオ) ポリーニ(マウリツィオ),バルトーク,アバド(クラウディオ),ポリーニ(マウリツィオ),シカゴ交響楽団
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2008/01/23
  • メディア: CD
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rachmanist

お邪魔します。最近ブログを初めました。
ラフマニノフという共通項で、ネットサーフィンしていましたら、ここに来ました。たまに寄らせてください。自分のブログのURLは
http://uchiyama1126.blog.ocn.ne.jp/
です。ちなみにラフマニノフの大好きな曲は楽興の時のprestoです。ホントかっこいいです。

 突然、失礼しました。

by rachmanist (2008-05-19 09:51) 

Mineosaurus

ラフマニノフがお好きなのですね。
僕も大好きです。抒情の掴まえ方が大きくて、そこだけに捉えられていないところがいいんです。
by Mineosaurus (2008-05-20 09:24) 

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