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不可思議な内省 [音楽]

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ベートーヴェン/幻想曲ト短調op.77

急下降する音形が音楽のテンポやリズムを換えるつど、力任せに入ってくる。
引きながら考えているような即興性があり、3度目から4度目の下降によって俯いた顔再びあげられたとき、目は閉じていて音楽はピアノ協奏曲第4番の中間楽章を思わせる数瞬の瞑想のあと、闇の中で手探りで壊れやすいものを探すようにゆっくりと流れては同じところから落ちて来るピアノの下降音形の跡に穿たれた小さな穴から煙のようには出してくる。
何か、どう作ろうかその場で迷いながら、頭の中にある音達の整列を辛抱強くまっているような姿が浮かぶ。
中間部からの中期のベートーヴェンらしい、気の迸りが始まると、それはようやく見つかったテーマを変奏してゆくように展開して閉じる。
ああ、こんな曲も作るんだなあ。という感じ。
行き着くところがなくて、始まりも決めていない。その辺にある旋律を下降しながらきょろきょろと探しつつ、一端見いだしたテーマは見事に形を変えて蘇生させる。
そして、最初に引き出したピアノの急下降はようやく音楽の帰結に形を与えられ、幻想形式に生まれ変わる。…ような気がする。
何度聴いても彼ははじめからこの曲を書く気なんてなかったのではないかと思わせる。
戯れに書き殴りながら形になってきたスケッチのように明確な霊感は降りないまま、技法の個性によって処理されてゆく。
気まぐれで不可思議な内省。
へんてこな曲だけど、なんか作曲者の弾いているユーモラスな背中が見えてくる。

 

エヴリディ・ベートーヴェン~究極のベートーヴェン・ベスト

エヴリディ・ベートーヴェン~究極のベートーヴェン・ベスト

  • アーティスト: コロンビア交響楽団,ゼルキン(ルドルフ),フランチェスカッティ(ジノ),ラルキブデッリ,清水和音,ジュリアード弦楽四重奏団,フィラデルフィア管弦楽団,クリーヴランド管弦楽団,フライシャー(レオン),ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ソニーミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2006/12/06
  • メディア: CD

 





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コメント 2

matcha

ベートーヴェン幻想曲ト短調、すみません。
聴くのは初めてでした。
交響曲7番が、ヨッパライ交響曲と言われてますが
こちらも少しお酒が入っていたんですかね。(笑・・・)

ブログ村のクリックしました。
いつも忘れてしまうんで、気をつけようと思います。
by matcha (2010-09-12 09:51) 

Mineosaurus

matcha さん。ありがとうございました。本日防災訓練ボランティア運営模擬訓練に行っておりました。マッチングの係でしたが、暑かったなあ。
by Mineosaurus (2010-09-12 21:18) 

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