きら星の中の一つ星 [音楽]
2011年最初の記事らしい記事は昨日聴いていたこの曲です。
フランツ・ベルワルド/ピアノ三重奏曲第3番ニ短調
第1楽章 アレグロ ノン モルト
第2楽章 アダージオ クワジ ラルゴ
第3楽章 アレグロ モルト~ウンポコ メント アレグロ
スウェーデン近代音楽の始祖と言えば言い過ぎか。
ボクの中では彼はシンフォニストなんだけれど、あまり演奏を耳にする機会がない日本ではほとんど名前さえ知られることがない。
でも、ボクは人の聴かない曲ばかり選んでいるわけではなくて、巨大で無限とも思えるバッハのような宇宙は別格だけど、ベートーヴェンにしろモーツァルトにしろブラームスにしろ苦手の分野以外ボクのライブラリにあるものはほとんど一度は記事にしてきた。
中には何度でも書きたいものもあったり、以前にはわからなかったものがこの年になって聴くと全く別な音楽に聞こえたり(モーツァルトに多いね。)、興味は尽きない。
たしかに典型の音楽には、そうなるだけの要素があり強さと説得力がある。
でも、現代までつながった森の中に一直線に引かれた道の向こうに見える古典にはちょっと視線をずらしただけで、見えてくる別の世界があったりする。
音楽家が持つ個性は学問的な分類の中ではあまり問題にされない。
その作曲家が生まれた国ではまた別の評価が成される。
そこに入っていって、自分の感性がというより、世界の感性が似通ったスタンスにあると感じるのが楽しくて音楽を聴く。
このベルワルドという作曲家は音楽教育を専門的に受けた人ではない。
以前にも書いたけれど、整形外科医としてリッパに身を立てることのできた人で、彼がその気になったのは交響曲の成功がきっかけで、それ以後高い木に登ったまま降りてこなくなった。
でも、シンフォニストとしてもボクは立派なものだと感じております。
近代になって『交響曲というよりテーマを持った管弦楽曲でいいのではないか』と思えるものが多いけれど、この人はそういうものとは一線を画している。
風貌はドラキュラ伯爵のような鏡に映らない部類の人物のように描かれた肖像画を知るのみで、以前弦楽四重奏曲を紹介したときからあんまり知識に進歩がない。
えー、ベルワルドはピアノ三重奏曲を3曲残しているけれど、この最後の曲が一番纏まっている。
渋いのはむしろ1番だろうけどね。
第1楽章にはこの人独特のわかりやすい歌があって、四重奏曲なんかのシリアスなものとはまた別のくつろぎの中に今の時代にはない簡素な華がある。
ベートーヴェンやモーツァルトのトリオにはやや手すさび的なくつろぎが聴けるけれど、この人はピアノトリオをひとつの完成されたジャンルの音楽としてシューマンあたりをジャンプ台にしている。
ここでもヴァイオリニストらしく、弦楽の扱いがとても巧みで何度か同じフレーズを繰り返し聞きたい衝動に駆られます。
スウェーデンではあまりにドイツ的な作風が災いしているのかその後のステンハンマル(この音楽家は好きです)やニールセンほどの人気はなかったようですが、最近評価が変わってきたというのは国民的音楽家からもっとグローバルな部分で評価できる要素をむしろこの人の方が多く持っていると言うことかも知れませんね。
第2楽章は個性的なピアノと低音楽器から醸し出されてヴァイオリンにつながってゆく哀切が美しい。シリアスな音楽になっています。
第3楽章は音楽的には素晴らしく自在です。第1楽章と続く第2楽章のロマンティズムと対置する協奏的な重量感と運動性に溢れています。
耳から離れない第1楽章を
今年も非常に興味深く読ませて頂きました。
by nomame (2011-01-03 06:47)
初めて耳にしました。
独特の浮遊感、疾走感・・・主和音がないんですね。テーマの頭だけ。エンドレスな展開でとても面白いです。
by glennmie (2011-01-03 10:00)
正月も終わりましたね。
今年も無事に過ごしたいものです。
by Silvermac (2011-01-03 22:18)
明けましておめでとうございます、今年も宜しくお願いします。
by tonta (2011-01-03 22:38)
明けましておめでとうございます
本年もよろしくお願いします
by くまら (2011-01-04 14:25)