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セヴァーン・ラプソディー [音楽]


75.gifジェラルド・フィンジィ/ セヴァーン川ラプソディー75.gif

フィンジィの音楽はそのあまりの自然さに書き留められた楽譜の中にフィンジィ自身の個性の投影を見いだせない。
それが個性であると言えばそうだろうけど、標題がなければどの曲も似通った印象的表現を採っているように感じるかも知れない。
ピアノのための牧歌にしても、惻々と伝わる悲嘆の心情を綴ったエレジーにしろ、狂詩曲と訳すにはいささか全速力の躍動が感じられないこのセヴァーン川を歌ったと思われる作品も、まるで爽やかな風の吹き抜ける、適度に手入れが行き届いた小径を自分のペースで歩いているようだ。
セヴァーン川と言えばイギリスでもっとも長い川で、ウェールズのスラニドローズ付近からイングランドに向けて流れている。
リバーサーフィンもできるような川だと言うけれど、この音楽の印象では川自体は何てことない長いだけのあまり幅の広くない川で流れも速くもなく遅くもない。
ただ、ウェールズからイングランドまでの河畔の風景の変化がゆったりと下る速度に合わせて流れてゆく。
そこら辺かな。
川自体の歌ではなく、風景からもたらされた霊感か。
だいたいこんなとらえどころのない自然が五線紙に書けるだけのイメージで良く頭に浮かぶものだと思ってしまう。
この音楽を聴き慣れるとドビュッシーあたりの音楽が凄く意志的に聞こえるから不思議だね。
ディーリアスにわずかに残っていた灰汁をもう一度清水で洗い流したような、それでいてフランス風の滲みのある音楽ではない。
淡い明晰の堆積。
それも羽毛のように軽く雲母のように薄い。
どう聴いてもイギリスの音楽です。
広大さはなく、親密でいて、室内楽的でもない。
音楽はそれでも幻想曲風の形式できわめてストイックな管楽と現から生まれる擦過音の中の鋭さを極力抑制した弦楽によって閉じられます。
何回聴いても形が掴めないけれど、一番無理なく落ち着く同じ心の場所にふわりと着地する。

Orchestral Music

Orchestral Music

  • アーティスト: Gerald Finzi,Adrian Boult,Vernon Handley,New Philharmonia Orchestra,Peter Katin
  • 出版社/メーカー: Lyrita
  • 発売日: 2007/05/08
  • メディア: CD

 

 

 

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