情景のコンチェルト [音楽]
レイナルド・アーン/ピアノ協奏曲ホ長調 1931
第1楽章 インプロヴィゼーション-モデラート
第2楽章 ダンス-vif(速く)
第3楽章 レヴェリェ(夢みるように)-トッカータ フィナーレ
このような曲が果たしてコンチェルトとして受け容れられたのかボクは当時のフランスの事情に詳しくないからわからないけれど、サロンからそのままオーケストラの中に誘われたような印象である。
彼の師の一人であったサン=サーンスにもこういう抒情を聴くことがある。
彼は天才少年時代から当時の大家であったマスネに生涯にわたって庇護を受けた。
庇護とは音楽についての師というだけではなく、性的な意味も含んでのことであり、三歳年長のプルーストとの親交もただ芸術のみの交遊であったとは思いにくい部分があるようだ。
真偽のほどはわからないけれど、とにかく優しく美しき少年は幼くしてその才能を様々な分野の芸術家に認められた。
特に歌曲の才能は凄かったらしいのだけれど、これがボクのもっとも苦手な分野でいまだに敬しつつ遠ざけている。
それにしても彼の作品は華やかな協奏の煌めきが感じられない。
そのかわりに何とも穏やかな協調と親和がある。
第1楽章の即興的なパッセージは師サン=サーンス譲りでテーマの簡潔さと韻を踏むように折り重ねられる弦楽の流れはマスネをやはり思わせる。
ヴァイオリン協奏曲の第1主題もそうだけれど、この人はそう数え切れぬほどの楽興が滾々と湧き出るようなタイプではなかったのかも知れない。
少し水っぽいけれど洒落ていて印象的なテーマである。
ピアノは流石に流麗でチェロの大胆な表現もおとなしくはあるけれど、それなりにハッとするような美しさを生む。
残念ながらあまりいい演奏がない。
聴きものは第3楽章の最初の部分。
この暖かな哀しみはどこから来るのだろう。
弦楽の惻々と沁みるような旋律はただ「哀しい」と主観的に訴える音楽ではなくて言葉を飲んだまま涙する人の口元にある微笑みの意味を感じさせる。
詩が直接的な言葉を避けて言葉のイメージを避けたまま内容を心に伝えるように音楽が操られる。
音楽にはもともと詩的要素があるものだけれど、この第3楽章は第1楽章の主題が回帰する部分まで時間をかけて情景を音化して行く。
Yotubeでは残念ながら何となくわかりかけてきたところで音楽が突然千切れてしまう。(こらッ!)
三楽章の音楽を5つのパートに分ける?
うーん。夢から覚めるねえ。
Piano Masters: Magda Tagliaferro
- アーティスト: Claude Debussy,Federico Mompou,Fryderyk Franciszek Chopin,Isaac Albéniz,Reynaldo Hahn,Robert Schumann,Magda Tagliaferro
- 出版社/メーカー: Pearl
- 発売日: 2001/11/20
- メディア: CD
以前ご紹介くださった「クロリスへ」、とても感動して大好きな作曲家の一人となりました。
この曲もとても素敵ですね。
この作曲家は、ホント、いいです。
私のところのコメント欄が壊れてしまっているみたいで、暖かいお言葉をいただきながら、お返事できずにいます。
すみません、こちらからご挨拶だけでもさせてください。
ありがとうございました。
by glennmie (2012-03-19 09:55)