マイナー・ピアノ協奏曲-26 [音楽]
ベンジャミン・ブリテン/ピアノ協奏曲
ブリテンの作品で一応このマイナーピアノ協奏曲シリーズはひとまず終わりにします。
きりがないというのが正直なところと、ピアノ協奏曲ばかり聴き直すのに疲れました。
で、最後に選んだのが(ホントは、いきあたりばったりなんですけど)、サー・ベンジャミンの作品でした。
この作品については決定版があります。
ピアノ:スヴィヤトスラフ・リヒテル ベンジャミン・ブリテン指揮イギリス室内管弦楽団
この作品も一応現代音楽の分類にはいると思う。
いつも思うのだが、鍵盤楽器として打楽器として、点の音符を打ち込んでゆくピアノが現代音楽を創造する天才達の頭にはどのように響いているのだろう。
感情の動物である人間がその心の有り様を揺さぶられるのは、理知のフィルターを通した音楽技法が生み出した作品に対してだろうか?
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番の第2楽章の中間部、バルトークのピアノ協奏曲第3番の第2楽章。
音の粒立ちが沈黙、あるいは極めて緊張した弦楽器の通奏に支えられて響くとき、深い瞑想と気品のあるリリシズムが生まれる。
その点に関してはこのブリテンの協奏曲もかろうじてボクの感性に深く響く。
12音技法であれ、黄金律であれ、バーバリズムであれ、作曲家の頭の中で情緒と一体になっていた歌に理知の技法をかぶせてゆく。
奇妙な、法則性のある歪んだ歌が、ボクの心の情緒的部分を思いがけない角度から揺さぶる。また、時には辟易させる。
現代音楽は聴衆と共に歩むのをやめたのだろう。
全てを知るかのような批評家はある曲を絶賛し、ある曲を酷評する。
でも、その曲がいかに複雑な技法で構成され、難易度が高いかを絶賛しても、それで感動を呼ぶかをあえて問わない。
極めて個人的で専門的な分野は極めて個人的で専門的な人に向けたメッセージとして、一般聴衆を置き去りにしてゆく。
音楽は音を楽しむものではないか。
理性で理解するものにボクは情緒を揺さぶられることはない。
ジョン・ケージで涙は流れない。
何度も繰り返し思い出しては反芻する感動の共有はない。
作曲者が頭の中にメロディーを浮かべ、それを伝えたいと思う。技法というフィルターを通す前の姿が作曲する人の頭にある内にボクはそれを知ってみたい。
とはいえ、このブリテンの作品はまだかろうじて情緒的に感じることのできる瞬間がそこここに素晴らしいレベルでちりばめられている。
第1楽章はパッサカリア。音楽の推進力はピアノを打楽器として中心に据え、様々に色合いを変えて提示される。リヒテルのピアノは力強く、また繊細で、こういう曲を弾いたとき彼の本当の力量が「…すごい」と思える。
第2楽章はワルツ。もちろん捻ってある。ワルツの持つ一般的な優雅さはない。ピアノは時に鋭く、情緒的に膨らんだり、優雅であったりめまぐるしい。
第3楽章はインプロンプト(即興)どこが…オーケストラだろうか、ピアノだろうか、ここでのリヒテルのピアノは本当に凄い。
終楽章はマーチとなっている。ショスタコーヴィチのような手放し勝利の推進ではない。
二度、三度と聴きたくなるレベルの名演です。
このCDにはもう一曲ヴァイオリン協奏曲が録音されている。歌う楽器であるヴァイオリンについては、やはりブリテンが異なるアプローチを行っていることがよくわかる。
Britten: Piano Concerto / Violin Concerto
- アーティスト: Benjamin Britten, Benjamin Britten, English Chamber Orchestra, Sviatoslav Richter, Mark Lubotsky
- 出版社/メーカー: London
- 発売日: 1989/10/20
- メディア: CD
他のを聴きたいという方は…
- アーティスト: Benjamin Britten, Kimmo Korhonen, Okko Kamu, Helsingborg Symphony Orchestra, Ralf Gothani, Ralf Gothoni
出版社/メーカー: Ondine
発売日: 1994/11/29 - メディア: CD
- Britten: Piano Concerto; Johnson Over Jordan (Suite)
- アーティスト: Benjamin Britten, Steuart Bedford, English Chamber Orchestra, London Symphony Orchestra, Joanna MacGregor
- 出版社/メーカー: Naxos
- 発売日: 2005/04/19
- メディア: CD
この他にもいろいろ出ています。マイナーじゃないかもね。
ランキングです。よろしければクリックを
コメント 0