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室内楽の宇宙-サマヴィル/クラリネット五重奏曲 [音楽]

 うーむ。だんだん深みにはまってくる。
Sirアーサー・サマヴィルはイギリスの作曲家でボクの苦手な歌曲で有名な人物だが、聴いたことのあるのはヴァイオリン協奏曲とこの曲だけ。
シア・キングのクラリネットで聴くことができる唯一のCDを探しにさがした。
もともとクラリネットという木管楽器の音色が好きなのですが、五重奏曲ということになると、モーツアルトとブラームスの到達点があまりに高みにあるので、どうしても手が止まることがあります。
でも、マックス・レーガーの作品やこの作品を聴けばこの分野のアンサンブルもなかなか捨てたものではない。と、思い直しますね。


第1楽章の導入部は弦楽器がやや悲劇的な匂いのする合奏を聴かせ、その中から愁いを含んだクラリネットが緩やかな歌を聴かせながら入ってきます。
近代といってよい時代の作品ですが、レーガーよりも晦渋でなく、イギリスの作曲家全体に言えることですが、ノーブルな静けさを持ち、優美です。
中間部ではメロディアスで牧歌的な歌が流れ、耳に快い。しかし、気品がありますね。
第2楽章は人なつっこいテーマがクラリネットから弦楽に引き継がれ、弦楽からクラリネットへと渡されて繰り返されます。
ニュアンスが細かいので、クラリネット奏者の演奏にゆとりがないと苦しいかな。
田園的な中間部がクラリネットの丸いフォーマットの上で、弦楽によって奏でられ、変奏されながら静かに閉じます。
第3楽章弦楽が静かで、暗い夜更けの風景を奏でてゆきます。クラリネットの独奏が入り、素朴だけど痛ましいメロディが緩い波のように打ち返す部分は非常に美しい。歌曲からとられた名曲にドヴォルザークの弦楽四重奏曲のための糸杉がありますが、ここでもリート的な音の使い方が優しく、メランコリックです。
いや、これは…ある意味ムード音楽になりそうなのですが、そう感じられないのはやはりイギリスという国の嗜みなのでしょうか。
中間部以降のクラリネットの歌はホントにいいです。
最後は縹(はなだいろ)色の夜明けの空が次第に白く広がってゆく光りに溶け合ってゆくように静かです。
第4楽章うってかわってフィナーレらしい生き生きとしたテンポのアンサンブルが展開しますが、やはりその底の部分には隠しがたいメロディへのこだわりがあります。弦楽と管楽が協奏しつつ全体の音楽的印象を抽象的にイメージさせる近代の手法とは異なる。楽器そのものではなく、まず、楽器によって奏されるメロディがあり、その美しさの重なりによって音楽が練り上げられていると言った印象ですね。

 


 


 

 

 


 


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