室内楽の宇宙-雨の歌 [音楽]
ブラームスにはメロディがないと誰かが言ってたけれど、彼にも歌があり、晩年の内省に沈まぬ涼やかな一刻がある。
ただどこまでも彼の緻密な構築はついて回る。
心から解放されることのないロマンティシズム。
第1楽章 ヴィヴァーチェ・マ・ノン・トロッポ
しのつく氷雨。
暖かな暖炉に朱色の炎が煌めき、照り返す部屋の仄暗い中に青白く澄んだ窓際に立ち、無数の水滴が流れ落ちながら一瞬凍りつき、部屋の暖かさが伝わる薄いガラスを隔てて、再び氷雨は水に帰る。
過度に思い入れのないヴァイオリンは細く歌を紡いでゆき、ピアノはやがて射し込んでくる夕暮れの雨後の浅黄色の光りのようにその楽章を締めくくる。
第2楽章 アダージオ
薄いガラスから射し込む光は、乾いた無数の塵が映し出す帯のような数条を描きながらやがて小さい部屋を満たしてゆく。
懐かしい歌は繰り返され、強く、弱く、微妙にニュアンスを変えながら、ヴァイオリンにピアノにとその音色を移しながら、幾度となく思い出のように繰り返されて閉じてゆく。印象的なピアノの紡ぐ厚く暖かい低音の上をヴィブラートのきいたヴァイオリンが滑るように流れてゆく。
第3楽章 アレグロ・モルト・モデラート
クラウス・グロートの詩に作曲された『雨の歌』は多分クララ・シューマンのためにこの楽章に顕れる。
この曲にもやはり、ブラームスの叶わぬ思いが織り込まれている。
個人的な愛の歌。
それ故、この楽章は優しく、子供の頃の雨に寄せる思い出がピアノパートに密やかに流れ、穏やかな憧れのままこの作品は閉じてゆく。
- アーティスト: ルービンシュタイン(アルトゥール) シェリング(ヘンリク), シェリング(ヘンリック), ルービンシュタイン(アルトゥール), ブラームス
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN
- 発売日: 2007/11/07
- メディア: CD
ヴィオラ版
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