夜想曲集---フォーレ [音楽]
フォーレのピアノ曲はブラームスに似ている。
フランス近代を代表すると言えば軽妙でウィットに富んだ流れるような耳障りを想像するけれど、
彼のピアノ五重奏曲を2曲聴くとまるでブラームスを聴いたように腹に堪える。重くて緊密。精緻。ロマンティック。
そしてピアノだけの小品の淡彩。
あまり色彩のない地味な装い。
例えば夜想曲第1番変ホ短調OP33-1
セピア色の古びた風景が薄暮の中に広がってゆくような…抒情というのでもない、艶っぽくもない、でも、何処かに心の埋め火が残っていて、風が吹けばすぐに闇の中にオレンジ色の炎を揺らせるような…一音符が持つロマンティシズムはブラームスに及ばないけれど、訥々と呟き続けるようなピアノは次第に熱を帯び夜想曲なの?と思いたくなるほどに盛り上がったりする。
美しいか?
ちょっと違うか。
それは年老いた恋人の精一杯の夢に寄り添う音楽のように、時には震える手で抱きしめられる。また、時に枯れた細い手が愛おしくなる。
夜想曲という名称を初めて自由な形式のピアノ曲に付けたのはアイルランドのロマン派の作曲家フィールドです。
そしてこの名称で初めて高い芸術性と結びついた作品を書いたのはショパンでした。
フォーレの夜想曲は夜想曲と呼ばなくてもいいようなものもあるけれど、華麗とは言えないこの曲達を何度も繰り返して聴いていると滋味が湧いてきて…一つの微笑みから様々な意味が生まれるような枯れたやさしさがある。
目を閉じてうっとりとするような音楽ではないと思うけれど、まか不思議に飽きの来ない音楽です。
夜想曲集として纏めて聴くことはないかも知れないが、手元に置いて一つ一つ時々取り出して聴いてみればいい。
今ボクが聴いているのはジャン・ドワイアンのピアノです。
例に挙げた第1番は先週、ジャン=フィリップ・コラールのピアノで聴きました。
一つ気を付けた方がいいのは、センティメンタルは微塵もない曲だけれど、自分の心が滅入っている時は、まるで鏡のように全てに写り込んで、抜け出せなくなるような魔力も持っていますぞ。
例えば最後の第13番ロ短調op.119
つまり、こりゃ、大人の音楽だね。
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