頑固オヤジの人生の縮図 [音楽]
エルガー 交響曲第2番変ホ長調op.63
イギリス古典音楽の父といってもいいパーセルの没後200年間、これといった栄光もなく時代を経てきたイギリス音楽界を覚醒させ、イギリス音楽を世界の檜舞台に押し上げたのはサー=エドワード・エルガーだった。
彼の音楽の偉大なパトロンであったエドワード7世の1907年5月の崩御に対し、エルガーはこの第2交響曲を捧げた。
イギリスの交響曲第1番とまでいわれた第1交響曲ほどではないが、名国王の下で平和、繁栄、栄光と霊感を受けて書かれており、エドワード王朝の叙事詩的性格を持っていると言っていい。
1911年5月24日ロンドン音楽祭の一環としてクインズホール管弦楽団を作曲者自身が指揮して初演された。(余談ですが、このクインズホール管弦楽団の団員が名匠ハンス・リヒターの下に集まり結成したのが現在のロンドン交響楽団です。)
曲は
第1楽章、アレグロ・ヴィヴァーチェですが、やはりノビルメンテ(=気品を持って)の指示があります。
この第1楽章の指示は楽曲全体に対するもので、彼の音楽の品格に対するこだわりは正に頑固一徹でした。
彼のアレグロ・ヴィヴァーチェは手放しの輝かしさはありませんが、いぶし銀のような風情で時折見せる優しげなまなざしには、彫りの深い歌心とユーモアが生きています。
とりわけボクが気に入っているのは第2楽章(ラルゲット)です。これは正に英雄の葬送行進曲のようで、弦楽の弱奏で始まる敬虔荘重な導入で始まり、管楽器による節度ある哀愁のこもったテーマが続きます。
中間部の大きなクライマックスの後も命の絶えるまで凛としたままの姿を変えず、エルガーの抒情の気品の高さを示しています。
第3楽章ロンド(性格的にはスケルツォかな)
第4楽章フィナーレ(ソナタ形式で簡潔)
万人に好まれるにはあまりにも渋いしかめ面ですが、モノトーンの美しさがあります。慣れれば癖になる頑固さの持つ愛しさに溢れています。
人生の重荷を背負った男の心からの独白と感慨が込められています。
ジョンブル=John Bull 。
緑に覆われた小高い丘の上で、逆行の夕日の中で、その沈んでゆく太陽と同じ色をした瞳を持っている老人がじっとたたずんだまま、終えてきた人生を振り返りつつ、海峡のかなたを見つめているような色彩と渋さに充ちた名作だとエルガー好きは思うのですが、いかが?
- アーティスト: マッケラス(サー・チャールズ), ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団, エルガー
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2007/10/17
- メディア: CD
エルガー:交響曲第2番、序曲(南国にて)
- アーティスト: デイヴィス(アンドリュー), BBC交響楽団, エルガー
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2001/11/21
- メディア: CD
バルビローリの渋ーい名演を探したんだけどヒットしなかった!
2008-02-03 06:42
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