ロマンティックな40番 [音楽]
名曲なんだけれど、いつも後回しにする曲。
一音符が鳴ると次がもう、頭の中に響いてしまって後を聴く気がなくなる。
でも今日はうそ寒い雨が白い息を縫いつけてゆくように降る休日。
窓から外を眺めながら、走らないペンタブレットを置いてキーボードに置き換えた。
思いっきりロマンティックな40番を聴いてみようか。
選んだのはスッごく古くてボクが苦手なモノラル。しかも、修正が効かないライヴ録音。
ブルーノ・ワルター指揮ウィーンフィルハーモニー管弦楽団1956年7月26日ザルツブルク祝祭劇場、ブルーノ・ワルターのウィーン復帰を記念したものだ。
演奏は古い。
現代のオーケストラの持つ精緻な演奏をベースにした知的造形はあんまり聴けない。
第1楽章のアレグロ冒頭からワルターのポルタメントが耳に引っかかる。
感覚的なワルターの作る音楽の流れは、今のボクの耳には余りにも古い。
でも、その音。
この本当の意味で古き都の雅とでもいうのか、この音色の絶妙のニュアンス!
ミスは隠しようがないライヴだ。
しかも、現代の優れた録音技術からすれば不満もある。
でも、時代なのだ。それらの不満を超えてこの演奏が素晴らしい。
ここにはウィーン復帰を祈願熱望した聴衆の心からの共感があり、歓喜がある。
また、楽員の指揮者に注ぐ眼差しの優しさ、自発性に溢れた熱と共感と音楽にともに浸る歓びがある。
ウィーンはかつて一度モーツアルトを拒絶し、裏切った。
しかし、今は不滅の共感と愛情を持ってこの天才を抱きしめようとその広げた手をワルターにゆだねている。
聴く人も、振る人も、奏でる人も同じ時代を共有し、同じムジツレーンに貫かれている。
古くなければならない演奏もある。
あるいは、『古い』という表現はしてはならない演奏かも知れない。
W.A.モーツアルト/交響曲第40番ト短調 K.550
第1楽章:モルト・アレグロ
第2楽章:アンダンテ
第3楽章:メヌエット・アレグレット
第4楽章:アレグロ・アッサイ
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