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ゴイェスカス-ゴヤの絵風場面集 [音楽]

この作品集はまたの名を<恋する若者達>という。


ここにあるゴヤの心象風景はあの黒の絵の時代の異形の世界ではない。
「恋文」を描いていた頃の情熱とスペイン風の愛に溢れている。
グラナードスがゴヤから受けた印象はその世界で止まっているようだ。


ボクにとってゴヤはあの「裸のマハ」や「着衣のマハ」のような静止した人物の世界ではなく、ただ一つ「わが子を食うサトゥルヌス 」です。
飢えた哀しみとあの、開いた眉、見開いた目の無惨さが忘れられない。
だから、このグラナードスが創り上げた恋する若者の世界との落差にいまだに違和感があるのです。
宮廷画家としてのゴヤと現代に繋がる魂の暗部を描いたゴヤの間に聴覚が失われたゴヤの世界の深い亀裂が走り、このグラナードスのピアノ曲はその狭間のゴヤの時代の風景を抒情的に表現しているのでしょうか
特に第1部となっている4曲にはその印象が強いですね。
そして第4曲(嘆き、またはマハと夜のウグイス)あたりの密やかながら美しい詩は、ボクの知っているゴヤからは出てこないけれど、グラナードスは何かをしっかり見据えて書いているようです。
第2部になる第1曲(愛と死)、第2曲エピローグ(幽霊のセレナード)、エル・ペレレ(わら人形)あたりは第1部の印象から大きく異なる世界です。
ロマン的なほの暗さが支配し、第4曲で使用された主題がさらに暗く深く心の闇に向かうような切り口がありますが、まだ、何処かに救いのような抒情的な煌めきがあるのはグラナードスの人間性なのでしょうか。
スクリャービンのようです。それでも、まだ黒の絵の強烈なレベルのにはほど遠い風景です。
ムソルグスキーのピアノ版の展覧会の絵が絵画の心象風景を描き切れていないのと同じようです。
ですが、表題を離れて、純粋にピアノ曲として、この第2部第1曲はこの組曲の中の白眉です。
グラナードスのパレットはゴヤよりも遙かにたくさんの色彩に満ちています。
グラナドス:ゴイェスカス

グラナドス:ゴイェスカス



  • アーティスト: ラローチャ(アリシア・デ), ファリャ, モンポウ, グラナドス
  • 出版社/メーカー: BMG JAPAN
  • 発売日: 2007/11/07
  • メディア: CD



ボクはラローチャの録音したピアノの音が華美にすぎるのであまり好みではないのですが、彼女がスペイン音楽を弾いた時、よりその華美な音色は生きてくるように思います。コンサートでの彼女のピアノはこんな風には聞こえません。
これは多分にレコード会社のコンセプトなんでしょうね。ルプーも、アシュケナージも同じような音がしますから。


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