室内楽の宇宙-ラフマニノフのチェロソナタ [音楽]
ラフマニノフのチェロ・ソナタト短調作品19
1900年の起死回生のピアノ協奏曲第2番の成功直後1901年に作曲されている。
第1楽章:レント アレグロ・モデラート
第2楽章:アレグロ・スケルツァンド
第3楽章:アンダンテ
第4楽章:フィナーレ:アレグロ・モッソ
ピアノパートが重要なのは言うまでもない。
シンフォニーの滔々と流れる旋律の美しさに通ずるチェロの優美な流れ。ピアノパートの美しさが際だっています。
レントの無垢なチェロの導入部。
続くピアノの単音の抑制された緊張。
主部のアレグロに入ってからの呟きはピアノの後をチェロ委が豊かな旋律で追いながら歌います。
爆発的なピアノの技巧が求められるのではなく、ここではチェロの豊麗な音の厚さに寄り添うロマンティックな風景のようです。
ピアノ協奏曲第2番の第2楽章で言い足りなかったことがあるような回想風のチェロとピアノの旋律が「ああ…ラフマニノフだ」と感じさせますね。
旋律は高く舞い上がらず、中空を漂いながら乗り切れる風を探しているように漂います。
第1楽章のクライマックスはやはりピアノから火がつきます。協奏曲の緩徐楽章のようにピアノは強奏から協奏へ共奏しつつチェロイの2倍は雄弁です。
対峙的な第2楽章を経て第3楽章の美しいアンダンテに入りますが、第2楽章のピアノの刻むスケルオのリズムはやはり、力一杯跳ねるのではなく、跳ねながらチェロの流れ込む道を確認するような躊躇いがあり、ちょっと中途半端な印象ですね。
主題再現部からの閃くようなピアノのパッセージはやはりラフマニノフですね。
チェロの通奏付きピアノソナタみたいです。
第3楽章は夢みたいに美しいです。
このチェロの使い方は弦楽の抒情性を大河のように使用する彼のシンフォニーを思わせます。
ピアノの刻むアンダンテの急がない歌の優しさもここでは寄り添って絡み合います。
2歩先を歩くピアノをチェロの作る懐かしい旋律が羽のような軽さで追いかけます。
肉声の歌のようにチェロはピアノに支えられ、懐かしそうに閉じてゆきます。
第4楽章は白眉です。
この楽章はしっかりした姿をしていて、コンチェルタンテです。
チェロの歌は一層濃密なメロディとなり、絶妙のピアノが引き弓の空白に染みこむように入り込み、螺旋を描くように高みをめざします。非常に充実した終楽章です。
ピアノにそこそこのヴィルトォジティがないと難しい曲ですね。合わせものですからめいっぱい弾ききるのではなく、ゆとりすら必要で、とても難しいのではないかと思ってしまいます。
ボクはハインリヒ・シフのチェロ、レオンスカヤのピアノという組み合わせで聴きました。
チェロ・ソナタ・ト短調
- アーティスト: シフ(ハインリヒ), レオンスカヤ(エリザベート), ローズ, ラフマニノフ, シベリウス, ドヴォルザーク
- 出版社/メーカー: マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
- 発売日: 1994/11/02
- メディア: CD
- アーティスト: バールタ(イルジー),ラフマニノフ,シュニトケ,ペルト,ラプシャンスキー(マリアーン)
- 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
- 発売日: 1995/11/21
- メディア: CD(ほりだしもの?!)
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