どっちがやりすぎ?どっちもかよ [音楽]
モーツアルト/ピアノソナタ第15番ハ長調K.545
第1楽章:アレグロ
第2楽章:アンダンテ
第3楽章:アレグロ
非常に好対照の二人の演奏を聴いた。
今ボクの耳に入ってきているのはいつも通りのギーゼキングのピアノです。
ストイックで淡々としている。
浮かび上がってくるモーツアルトはロマンティックではなく、中庸の理想。癖のない、でも味のある懐かしい演奏。
今日ボクが比べたのはギーゼキングではなく、フリードリヒ・グルダとグレン・グールドでした。
この二人ほどモーツアルトで好き勝手をやっている人も珍しいのですが、もし、モーツアルトが自分の曲が頭に入っていて、実際の演奏会の場で、限られた聴衆に対し、その場で最も彼らしい演奏をするとしたら、多分、グルダのような演奏ではないかと思うのです。
第1楽章の出だしから彼の指はモーツアルトの原曲?の上にウィーンスタイルの装飾をこってこてに塗ってゆきます。
「何だぁ、こりゃ!?」てな具合に飾り立てられたモーツアルトは、遊びに満ち、歌い、自由に飛翔します。
グルダの心に感じたモーツアルトに素直に表現が重ねられ、第2楽章のアンダンテで一瞬キラキラする装飾音の間から覗く、哀しみの1音に浮ついていた心が仄暗い底なしの闇に連れて行かれるような一瞬があってどきりとします。
全体で12分28秒もかけて弾ききります。
ちょっとやりすぎの感は否めませんが、モーツアルトという天才にはこういう側面が多分にあったのではないかと思わせる説得力があることも確かです。
グールドの演奏はこれがまた対照的なメカニカルなスピードで突っ走ります。
全体で5分45秒!「なんだ、こりゃ?!」まるで彼の弾いているバッハを聴くようなスピードで突っ走り、その中のほんの僅かな弛緩が第2楽章を作っています。
でも、不思議なことにバランスがとれているんですね。
トイレに行きたくて必死で曲を弾きとばしていると言った風情ではなく、初めからこうなんだと言わんばかりのアレグロとのバランスです。
でも、なんだか、これもモーツアルトならやりそうな感じがしてくるから不思議だね。
でもさ、5分45秒はないだろ?
この2曲を聴いた後で、ギーゼキングを聴くと、何だか音楽が死んでいるように聞こえてしまいました。
速度標記は全体のバランスを表しているのならグールドも「あり」ですね。
「アンダンテはこうだよ。」とゆっくり歩いてみせるギーゼキングは何だか生真面目で、モーツアルトにからかわれそうですね。
モーツァルト : ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K.331「トルコ行進曲付」
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リファレンスとしてのギーゼキングはここで聴けます。
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