室内楽の宇宙-混沌の美 [音楽]
フォーレ/チェロソナタ第1番ニ短調op.109
第1楽章:アレグロ
第2楽章:アンダンテ
第3楽章:アレグロ・モルト
整理された美がいつもボクには想像できた。
でも、2曲のヴァイオリンソナタの後に書かれたこの第1番のチェロソナタの第1楽章は見事にそれを裏切る。
混沌とした楽想の中に時折何かが煌めく。
うまく言えないけれど、美しい。
短いけれど切り口が協奏的で三楽章形式にふさわしい。
チェロという楽器の魅力はViolin Celloの名の通り、滑らかで豊かな中低音の響きの中で、ヴァイオリンレベルのしなやかな歌が歌えると言うことだ。
ピアノという楽器とのかみ合いはヴァイオリン以上に明確で、ピアノの高音の鋭さと弾き手によって異なる芯と太さと丸みがとてもよく乗ってくる。
フォーレのチェロの扱いはそれを知悉していて実に巧みに聴かせてくれる。
彼の室内楽はチェロがとてもよくものを言う。
でも、けっしてしゃべりすぎることはない。
第2楽章の美しい瞑想の歌も、ピアノとのからみの美しさの中で彼我の役割を際だたせながら沈黙していてもその雰囲気は豊かで暖かい。
第3楽章の複雑になってくるチェロとピアノの交歓は上品な抒情の中で各々の歌の違いを際だたせながら盛り上がってゆく。
降りてくるグリッサンドの煌めき、上ってゆく低い歌の帯の淀みない流れ。
この曲はフレキシブルで、どんな奏者でも許容してしまいそうだ。
ロデオンとコラールのように小さくまとまっていても、雄弁なトルトゥリエの新旧両盤の掘り下げの深いアプローチでも、どちらにも気に入ってしまうそこここがある。
つまり、ボクはこの曲が好きなのですね。
誰が弾いていてもね。
2008-04-01 06:41
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