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戦争ソナタ [音楽]

全て判るとはいいませんけど…

これは凄いね。
もっとも演奏される数が多いのは、このソナタの第3楽章だろうけど、全体のきっちり計算された綿密さ。体制との心理的な闘いの中で、その1音符にまで凝らされた意志の透徹。
戦争ソナタのいわゆる6番から8番までの作品の中で情緒的には6番が好きなのだけど、この7番はプロコフィエフだけにとどまらず、20世紀のピアノソナタの中で最高傑作と呼ばれるにふさわしいものでしょう。

情緒は吹っ切られていて、覗くのは音の持つ深さと感覚的な爽快感。
でも、このソナタの構成はリストのような前衛性よりも、むしろきっちりした古典的様式の中に心の闘いを押し隠し、レニングラードのホールで青白い顔に、黒縁の眼鏡をかけた彼が「ハラショー」の嵐を受けながらも、独り心の底に祖国への絶望と芸術の心の自由を守り得た安堵感に一礼する彼のストイックな横顔が浮かびます。
国家というものとの間の緊張感、底のない浮遊感。
込められた気迫と表に出さない綿密な設計と緻密で複雑な音構造。
強烈な不協和音の後のアンダンテの心の温もりのような数瞬。
第1楽章は一度では掴み切れないものがみっしりと堅牢な構築物を構成しています。
第2楽章は冒頭の主題がシューマンの「リーダークライス」の中の一曲『悲しみ』に由来しています。
隠れていた体制に対する心根が悲しくも解釈として、批判される恐れがあるほど明確に顕れています。美しく、情緒に濡れない悲しみに満ちた緩徐楽章です。
このニュアンスはあの映画『善き人のためのソナタ』を観た時にどこかで味わったと思ったものでした。今、思い出しました。
第3楽章はそれだけが単独で弾かれるほど、至難で近代的でアグレッシヴな楽章です。
これを弾くピアニストはそれぞれの資質が裸で顕れるところがあり、非常に興味深いですね。
ただ独り、粗暴であることすら美しい音質によって塗り替えられるアシュケナージだけが、じれったいほどの完璧を聴かせます。
でも、申し訳ないけれど、彼のプロコフィエフは凄く深いんだけど、ここでは我を忘れて欲しかった。

プロコフィエフ/ピアノソナタ第7番変ロ長調op.83『戦争ソナタ』

第1楽章:アレグロ・インクィェート(不安な)
第2楽章:アンダンテ・カロローサ(熱情的に)
第3楽章:プレチピタート(性急に)

 

シルヴァー・ジュビリー・コンサート・ライヴ1953

シルヴァー・ジュビリー・コンサート・ライヴ1953

  • アーティスト: ホロヴィッツ(ウラディミール),プロコフィエフ,シューベルト,ショパン,スクリャービン,リスト,ドビュッシー,ホロヴィッツ
  • 出版社/メーカー: BMG JAPAN
  • 発売日: 2001/12/19
  • メディア: CD

このアルバムにはシューベルトの21番ソナタも入っていますが、これがまた、感動的な演奏でした。第7番の初演者はリヒテルですが、ホロヴィッツはこの第7番をアメリカに紹介したピアニストです。

プロコフィエフ:戦争ソナタ集

プロコフィエフ:戦争ソナタ集

  • アーティスト: アシュケナージ(ウラジミール),プロコフィエフ
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1995/02/25
  • メディア: CD

アルゲリッチ・コンセルトヘボウ・ライヴ1978&1979(ソロ・リサイタル)

アルゲリッチ・コンセルトヘボウ・ライヴ1978&1979(ソロ・リサイタル)

  • アーティスト: アルゲリッチ(マルタ),バッハ,ショパン,バルトーク,ヒナステラ,プロコフィエフ,スカルラッティ
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2000/02/09
  • メディア: CD

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