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ヒラーのピアノ協奏曲第1番 [音楽]

フェルディナンド・ヒラーを取り上げるのはこれで3度目ですが、2度は主にピアノ協奏曲第2番について書きました。
今回2度目に書いたように、唯一ハイペリオンから発売されたCDが漸く手元に届いたのです。
HMVの配送センターから何度もキャンセルの意向を打診されたけれど、待った甲斐がありました。
まず、第2番を聴きましたが、この内容についてはもう書きません。(笑い)
いい曲です。
ポンティ盤より録音状態はいいです。音の抜けが良くてさすがにアナログをデジタルに変換したものとは違っています。ピアノも綺麗でした。
ここでは、彼の最初のピアノ協奏曲である第1番について書きます。

 

ヒラー/ピアノ協奏曲第1番ヘ短調op.5

第1楽章:アレグロ・モデラート
第2楽章:アダージオ
第3楽章:アレグロ・モデラート・エ・コン・グラジア

まあ、これは若書きであり、第3番と同じく世界初録音になるわけですが、第2番と比べると隔世の感があります。
ある意味ではショパンの才能の凄さがわかりますね。
この曲も第2番のような凝縮した形ならば良かったのでしょうが、主題にあまり魅力がありません。
所々に聴かれる旋律の美しさやリズムの特徴はヒラーのものですが、彼は途中で化けるタイプの作曲家だったように思えます。
ピアニストとしてやりたい事が詰まりすぎていて、全体の管弦楽での繋がりが間延びしています。
世界初録音で世界最後の録音にならないように祈ります。
ただ、ハワード・シェリーのピアノは頑張っています。弾き振りでいけるだけのオーケストレーションですから響きは薄いですが、やや硬質でしなやかなタッチはマイケルポンティの少し堅すぎるソノリティよりも好ましく、楽しめました。
真面目な演奏だけに装飾音も同じニュアンスで鳴っており、作品の荒さをカバーすると言うよりもそのまんま演奏したという感じですね。
毎回思うのですが、何故、埋もれてしまうのでしょう。
間違いなく当時の聴衆の心は捉えていたはずです。
音楽の厚みはありません。
ブラームスの練りに練った2曲の協奏曲以外にロマンティックなピアノ曲でありながらシンフォニーのように響くものはなく、あれらは別格なので、もともとピアノ協奏曲というのは深味のあるものではないのではないかと思ったりもするのです。
つまり、求めているというか目指しているものが違うのではないかという事です。
ベートーヴェンの第5ピアノ協奏曲を毎日は聴けませんが、ブラームスの第2ピアノ協奏曲なら聴けるかも知れません。
現代の聴衆の耳は限界効用が逓減しているのでしょうか。
求めるものが多すぎるのかも知れません。
まず、ピアニストがいて、その人が引くピアノ協奏曲が用意されている。
聴衆はレコードがない一期一会を愉しんだのですね。
この曲はフェルディナント・ヒラーという天才ピアニストを世に出すために充分な技術を発揮させるパートを持ち、当時の聴衆はただ、それを愉しんだのではにでしょうか。
こ難しい理屈ではなく、ムジツレーン(音楽する楽しみを)共有していたのではないかと思うのです。
音楽が音楽学になる前はきら星のごときピアニストと個性豊かな作曲家がいて、その中に一つ二つと高くそびえ立つ弧峰はあったけれど、みんなはそれだけに音楽の座を譲る事もなかったのでしょう。
いま、躍起になって歴史に埋もれた作曲家を発掘しようとしている一部の音楽制作会社の責任者はソレに気づいているのかも知れません。

Hiller: Piano Concertos 1-3

Hiller: Piano Concertos 1-3

  • アーティスト: Ferdinand Hiller,Howard Shelley,Tasmanian Symphony Orchestra
  • 出版社/メーカー: Hyperion
  • 発売日: 2008/05/13
  • メディア: CD

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