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どの辺がエスプレッシーヴォ? [音楽]

ヒラー/ピアノ協奏曲第3番変イ長調op.170《コンチェルト・エスプレッシーヴォ》

情熱の協奏曲とでも訳すのかな。
にしては静かな出だしで、テーマもおとなしい。作品113のピアノ小協奏曲のドンドコ調とは違ってナイーヴな出だしです。
今回が世界初録音だそうで、その点では第1番と同じですが、ここには成熟してきた証があります。

ただ、弾き振りで間に合ってしまうオーケストラの薄さは覆いようがなく、意気込みと長さが管弦楽の厚みでカバーし切れていなくてピアノが鳴っているときはオケが休んでいて、オケが鳴り始めるとピアノがおとなしくなると言ったところががっきょくの厚みのなさになっているのだと思います。
聴き込んでいるとそれなりに美しいフレーズがあり、主題による一貫性が摂られているのですが、散漫な感じは拭えません。
ただ、第1番の時にも書きましたが、これはこれで1つの見識ではないかと思うのです。
我々はあまりにも様々な楽曲を繰り返し聴きすぎているのではないでしょうか。
彼らピアニスト兼作曲家が目指したものの志が低いなどという批判はとんでもない事のように思います。
レコードやらテープやらCDやら、記録されることなど全く思いの外。
コンサートホールで椅子に座り演奏者と同じ空気を吸いながら時間を共有する。
彼らの行為はそこから出ていないのです。
ボクのようにコーヒーをすすりながら椅子に両足を投げ出して眠っているか起きているか、わからないような状態で自分の曲が聴かれているなどとは思いもよらないのでしょう。(余談ですが、かつてカルロス・クライバーはこのことを録音嫌いについて聴かれた時にコメントしてましたね。寝ころんで聴かれたらたまらんでしょうね。)
そうであっても素晴らしい作品は例外的にあります。
敢えて例外と言いましたが、現代はこの例外が音楽の教科書に全てであるかのように載っているのです。

第1楽章:アレグロ・コン・アニマ
第2楽章:アンダンテ・クワジ・アダージオ
第3楽章:アレグロ・コン・スピリート

第1楽章はアニマというほどの動きはないようです。ピアノはニュアンスの繊細さが求められるようで長いだけに平板な演奏になると苦しいですね。
第2楽章はリリカルで、美しい旋律があります。
ただ、ピアノが流れた後にオーケストラが追いかけるだけの部分ではもっと弦楽の瑞々しい総奏が欲しい。
第3楽章も同じですね。ピアノはそこそこというか、見事だと思います。引き立てるものが痩せていて安定感がないけれど、エスプレッシーヴォの表題にもう少し熱いものを期待していると肩すかしを食いますね。
野心なく、スケールなく、求心力なく、美しくピアノを弾かせるためのコンチェルトです。
ボクは嫌いではないです。決して。

Hiller: Piano Concertos 1-3

Hiller: Piano Concertos 1-3

  • アーティスト: Ferdinand Hiller,Howard Shelley,Tasmanian Symphony Orchestra
  • 出版社/メーカー: Hyperion
  • 発売日: 2008/05/13
  • メディア: CD


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pan-nohi

ブログに、コメントを残してくださってありがとうございます。
本当に多趣味ですね!!
何かにこだわりを持って生活をおくるのって楽しみが増えそうです!
by pan-nohi (2008-06-10 09:54) 

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