センチメンタル・リリシズム [音楽]
スクリャービン/ピアノ協奏曲嬰ヘ短調OP.20
第1楽章:アレグロ・モデラート
第2楽章:アンダンテ
第3楽章:アレグロ
かすかな管楽の響きと弦楽の涼やかな総奏がまだ途絶えないうちに、ピアノは抒情的で美しい旋律を奏で、オーケストラがそれを引き継ぐ。
弦楽の線が均一に走り、ムード音楽一歩手前の危うさの中で音楽はこれ以上は違う世界に入ると感じさえする。
明るさに中に潜んでいた悲劇性が弦楽の情熱的な総奏に血が滲んでくるように浮き上がってくる。
マズルカのような第2主題が細かい会話を交わしている間も、うねるような情感はすぐそこまで押し寄せていて、センチメンタルと評されようとも、これが自分の音楽なのだという風にピアノはリリカルに鳴りきる。
第2楽章はかすかに明るく、瞑想性を持って変奏される主題は甘美でそれ自体弦楽の撫でるような愉悦の中で様々に装飾される。
性格的な変奏ではなく、古典的な原形を想起させる律儀さがある。
このような変奏スタイルを保ちながらも、スクリャービンの音楽は全力で疾走する感じはなくて、どこかで醒めていながら表面は誰のためにそうなるのか、ロマンティックな音楽が薄く広がる。
これほどの柔美な旋律が古典としてあるのだろうか。ピアノよりもむしろ管弦楽、とりわけ弦楽に魅せられた。
ボクはこの楽章は好きですね。
第3楽章それほど演奏者は多くはないけれど、様々なピアニストでボクはこの楽章を聴いた。
サン・サーンスのように水っぽく響くのではなく、しっかりとした語り口を持っている。
蠱惑的な彼のピアノ曲よりも、明確な主題がサロンからコンサートホールへと導いている。
全ての楽章が抒情的で、美しいテーマを持ち、むせかえるような情熱がリリカルなピアノの響きで中和され、大人しいけれど、何度聴いても嫌味のないスクリャービンが仕上がっている。
あまり張り切って弾かれると恥ずかしくなるような、でも、コーダの華々しく咲き誇る花は夜に咲く蘭の妖しさはなく、陽の光の中で咲く健全な花です。
若き日のアシュケナージがロリン・マゼールの指揮で録音したアナログリメイクです。
- アーティスト: アシュケナージ(ヴラディーミル),スクリャービン,プロコフィエフ,マゼール(ロリン),ロンドン交響楽団,ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団,ガブリエル弦楽四重奏団,パディ(キース)
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2007/06/20
- メディア: CD
ロシア・ピアニズム名盤選-12 ショパン/スクリャービン:ピアノ協奏曲
- アーティスト: ネイガウス(ゲンリヒ),ショパン,スクリャービン
- 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
- 発売日: 2003/05/21
- メディア: CD
スクリャービン:交響曲第2番 ピアノ協奏曲嬰ヘ短調
- アーティスト: ベルリン・ドイツ交響楽団,スクリャービン,アシュケナージ(ウラジミール),ヤブロンスキー(ペーテル)
- 出版社/メーカー: ポリドール
- 発売日: 1997/02/26
- メディア: CD
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