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揚々として [音楽]

モーツアルト/ピアノ協奏曲第12番イ長調K.414

第1楽章:アレグロ
第2楽章:アンダンテ
第3楽章:アレグレット

その人を包む憂愁はまだ生まれていない。
1781年ウィーンに移り住みそこで独立した天才は、プロのアーティストとしての道程を刻んだ。
上流階級の子女にピアノフォルテを教える傍ら、予約演奏会を開き、生活の糧を得ることになる。
浪費癖のある妻と金銭感覚のない天使のつがいは、まるで自転車操業のようなくらしの中でも、きっと何の憂いもなく幸福であったのだと思いたい。
モーツアルトは予約演奏会で次々と新作を発表する。
その中心にあったのがピアノ協奏曲である。この第12番の協奏曲はウィーンで最初に作曲した3曲(11,12,13番)のうちの1曲でおそらく一番最初に作られたのではと言われている。
明るく、混じりっけのない結晶のような旋律。苦悩の跡がない羽の生えたようなアレグロ。
アンダンテは短調に傾き、翳り、微笑みながら涙を流すような晩年の胸を衝くものではなく、サラリと胸に溶けて行く美しい憂いを鏤めたひとときのモノローグであり、涙とは無縁の日陰のやすらぎである。
こんな音楽が軽く筆先を走る。
子供が得意な絵を描くように、夢中になった子供の目をした青年の姿が目に浮かぶ。
どんなに努力し、苦悩の末にできあがった音楽が尊く、偉大であろうとも、まるで落書きをするように書きとばした彼の楽譜がひとたびオーケストラに乗り、ピアノが入った途端に、百の努力も苦悩も何の主張もできずにうなだれる。
人の才能ではないものを人は天賦の才と呼んだ。
原初の意味がここにある。
決して自慰的ではなく、決して楽天的ではなく、決して自惚れてもいない。
決して自然ではないのに、何よりも不自然ではない。
何も足せないし、何も引けない。
そんな音楽を彼は揚々としてどこからか生み出してきた。

この時、それは
モーツアルトの時代なのです。

モーツァルト:ピアノ協奏曲第1

モーツァルト:ピアノ協奏曲第12/13番

 

  • アーティスト: アシュケナージ(ウラジミール),モーツァルト,フィルハーモニア管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1994/11/26
  • メディア: CD(少し綺麗過ぎか)

モーツァルト : ピアノ協奏曲 第12番 イ長調、K.414

モーツァルト : ピアノ協奏曲 第12番 イ長調、K.414

  • アーティスト: ブリテン(ベンジャミン),モーツァルト,ハイドン,オールドバラ音楽祭管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1999/05/22
  • メディア: CD(いや、びっくり…)

モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番&第12番

モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番&第12番

  • アーティスト: ルプー(ラドゥ),ベートーヴェン,モーツァルト,セガル(ウリ),イギリス室内管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2004/12/08
  • メディア: CD(綺麗な音ですが、少し抒情的すぎるね。)

モーツァルト:ピアノ協奏曲第12番/同第19番

モーツァルト:ピアノ協奏曲第12番/同第19番

  • アーティスト: ピリス(マリア=ジョアオ),モーツァルト,ジョルダン(アルミン),ローザンヌ室内管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
  • 発売日: 1999/11/25
  • メディア: CD(オススメ!)

モーツァルト:ピアノ協奏曲第12番

モーツァルト:ピアノ協奏曲第12番

  • アーティスト: ヘブラー(イングリット),モーツァルト,ハイドン,ゴールドベルグ(シモン),オランダ室内管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2001/10/11
  • メディア: CD(音がロマンティック!)

モーツァルト:ピアノ協奏曲第11番&第12番

モーツァルト:ピアノ協奏曲第11番&第12番

  • アーティスト: 内田光子,モーツァルト,テイト(ジェフリー),イギリス室内管弦楽団
  • 出版社/メーカー: マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 1993/09/05
  • メディア: CD(今、最高のモーツアルト少し冷たいけど)

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