室内楽の宇宙-失われた統合 [音楽]
シューマン/ピアノ三重奏曲第2番ヘ長調OP.80
第1楽章 非常に活発に(Sehr lebhaft)
第2楽章 深い表現で (Mit innigem Ausdruck)
第3楽章 大きな動きで(In massiger Bewegung)
第4楽章 早すぎずに (Nicht zu rasch)
シューマンの第1番のピアノ三重奏曲はボクの好きな曲なのだが、この第2番はよくわからない。
表記もドイツ語で書かれており、多分こんな意味ではないかということ以外は、ドイツ語のライナーノーツではさっぱりわからない。
あまり新譜も、過去の録音もよくわからない。
とにかく露出度が少ない。
部分部分を取ってみれば非常に繊細でロマンテックな旋律が浮かび上がってきて、シューマンの独特の陰影を醸し出すのだけれど、奇妙に纏まりが欠けていて、音楽がとぎれとぎれに聞こえる。
繊細な歌が強い風の中で掠れてしまうように少し歩いては重荷に耐えかねたように立ち止まる。
聴き込んでくれば、また違った面に気づいて病みつきになりそうな旋律の重層と錯綜があり、通り過ぎた後、まだ聴き取ってないものがある気がしてついカウントを戻してしまう。
ヴァイオリンソナタほどではないにしろ、室内楽の年から5年を経て書かれた3つのピアノ三重奏曲は多かれ少なかれ、この頃のシューマンの病み始めた精神世界を垣間見せ、混乱したような旋律線と濃厚なロマンティシズムが一段とその色を深めている。
限りない夢幻の世界に浸りつつ、一方で古典的形式に対する思い入れも深まっており、まさに矛盾の中で喘いでいる。
心と手が離れ、音楽は複雑きわまりない状況の中で、シューマンの病んで行く精神を生々しく伝えてくる。
- アーティスト: ユボー(ジャン),シューマン,ムイエール(ジャン),ヴィア・ノヴァ四重奏団,ロデオン(フレデリック)
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2002/08/21
- メディア: CD
コメント 0