SSブログ

サン=サーンス 保守的なるものとの苦闘 [音楽]

サン=サーンス/ピアノ協奏曲第1番ニ長調OP.17

第1楽章 アンダンテ-アレグロ・アッサイ
第2楽章 アンダンテ・ソステヌート・クワジ・アダージォ
第3楽章 アレグロ・コン・フォーコ

いつの頃からサン=サーンスは保守的な作曲家と言われはじめたのだろう。
現代にあって、ボクはそれに異を唱えるつもりはないけれど、23才で書いたのピアノ協奏曲第1番などは、演奏家としての高い評価とは裏腹に当時の19世紀フランスの保守的音楽界の中で作曲家としての評価はあまり高いものであったとはいえない。
彼はこの作品によってフランスにおいて本格的なピアノ協奏曲を書いた最初の作曲家となったのでした。そのことひとつをとっても、批判はするが実践はしないフランスのがちがちの非保守的情況を垣間見るようなものである。
自国の芸術に対して痛烈な批判を行うフランス人の気質というのだろうか。
ワインひとつをとってもそうだけれど、最もフランスのワインを理解している国は英国であるといわれて久しい。
ちょっとさみしいね。

横道にそれかけたけれど、この曲の第1楽章は緩やかな序奏から始まり、全体を統一するホルンの動機が第1主題で通される。
全体を通じたバランスがよく、整理されていて近代フランスの室内楽を聞くような馥郁たる香気は嗅げない。純粋に伝統的3楽章形式で作られた極めてノーマルな作風でしょう。
ただ、ここにはショパンのような暗くロマンティックで個性的なフレージングはなくて、もっと陽の光の下にある音楽です。
ピアノパートは素晴らしい。
サン=サーンスの精神的な一面を見せるのは第2楽章の沈潜した気分でしょう。
ブリリアントな第1楽章第3楽章の華々しく華麗でピアニスティックな魅力に溢れた楽章とは異なり、ト短調の言葉少なく、暗くロマンティックでちょっと深みのある音楽になっています。
オーケストレーションの巧みさは特筆ですね。オルガン風の通奏が暗く重く、時折浮き上がってくるヴァイオリンの風鳴りのような高音を美しく際だたせ、ピアノの音色を浮き上がらせます。
東洋風の趣は後の第5番のエジプト風を彷彿とさせます。
サン=サーンスの書いたピアノ協奏曲の中でこの楽章がもっとも美しい落ち着きを持っています。
のりは僕がもっとも好きなベートーヴェンの第4協奏曲の第2楽章でしょうか。
最終楽章は一転した二つの主題が交差しつつスピーディに盛り上がって行きます。
華麗なピアノのテクニックがやや曲全体を水っぽくしますが、これがサン=サーンスの持ち味なのですね。
いい曲です。
今ではすっかり保守的な作曲家と評価されているサン=サーンスですが、当時はそのレッテルよりも遙かに先を走っていて、闘うべき相手であったといわれていますが…


 

サン=サーンス:ピアノ協奏曲全集

サン=サーンス:ピアノ協奏曲全集

  • アーティスト: ロジェ(パスカル),サン=サーンス,デュトワ(シャルル),フィルハーモニア管弦楽団,ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団,ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2003/10/22
  • メディア: CD

サン=サーンス:ピアノ協奏曲

サン=サーンス:ピアノ協奏曲

  • アーティスト: オムニバス(クラシック),サン=サーンス,カントロフ(ジャン=ジャック),小川典子,タピオラ・シンフォニエッタ
  • 出版社/メーカー: キング・インターナショナル
  • 発売日: 2001/07/25
  • メディア: CD

Saint-Saëns: Piano Concerto No. 1; Wedding Cake; Rapsodie d'Auvergne; Allegro appassionato; Africa

Saint-Saëns: Piano Concerto No. 1; Wedding Cake; Rapsodie d'Auvergne; Allegro appassionato; Africa

  • アーティスト: Camille Saint-Saens,André Previn,Royal Philharmonic Orchestra,Jean-Philippe Collard
  • 出版社/メーカー: EMI
  • 発売日: 1990/10/25
  • メディア: CD

9743423.gif
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ

nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(2) 
共通テーマ:音楽

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。