声－Ｔｈｅ ＣｏｌｄＳｏｎｇ

１９８３年。ＨＩＶ（後天性免疫不全症候群＝エイズ）という恐怖の感染症が世界を席巻した頃、エイズでなくなった最初の著名人クラウス・ノミのことをいつか書こうと思って書きかけたまま年を越したんだけど、最近先に書かれてしまった。
彼は音楽の様々なジャンルだけでなく、舞踏の世界にも足跡を残したパフォーマーだった。
享年は３９歳だったと記憶している。
一目見たら忘れられないフランケンシュタインの怪物のようなメイクにその窪んだゲルマン的な悲愴な目の輝きと知性的な哀しみを湛えた声質。カウンターテナーといえるのかな。
フレディ・マーキュリーにも共通するものがあるけれど、ボクが彼の『Ｔｈｅ Ｃold Song』を聴いていて

思ったことは長い時代を経て発達してきた声楽というジャンルの『声』という楽器についてだった。
それはマイクロフォンのない、遙かな時代から遠く広く聞こえるように、様々に錬磨され、発声技術として確立された呼吸法や肉体的な声帯の鍛錬等によって今日まで独自の価値を保ち続けている。
『古い』歌い方なのではない。
楽器なのである。
楽器である以上はバス、テノール、アルト、メッツォソプラノ、ソプラノとその性能に合わせ規格が決められ、音楽によって必要な楽器の編成として組み入れられる。
一人一人がニコロ・アマティやストラディ・バリウスやガルネリウス・ダルジェスを持っているのです。
現在のニュー・ウェイブやロックはもちろん鍛錬はされているものの遙かに多様で個性的な通常の声帯域を使いつつ、不足する部分をマイクロフォンの性能の上で表現される。
だから、その歌い手の音域に合わない無理な音が求められたとき、その声はかすれ、裏返り、苦しげな叫びにもなる。
でも、それは人間の痛切な表現法として理にかなっていて、ボクらはその限界を超えようとする魂の生々しさに感動する。
クラウス・ノミはそういうやり方をとらなかった。
現代のミュージックシーンの中にありながら、彼の音域はコントロールされ、高音が無理なく楽器としての性能に裏付けられた正確な音を奏でた。
それは静かな激情でした。
現代的であり、その歌唱法は伝統的であり、楽器としての側面を多く感じさせながら、マイクロフォンを通しても同様のやり方を押し通した。様々な可能性があって、様々なジャンルの人の心に引っかかった。
彼の楽器は様々なシーンで奏でられた。
このオーケストラと共演した怪作『The Cold Song 』は小林克也と伊武雅刀のシュールギャグアルバム、スネークマンショーの『急いで口で吸え！』の中でも使われていました。

スネークマンショー（急いで口で吸え！）

• アーティスト: THE CRAP HEADS
• 出版社/メーカー: Sony Music Direct
• 発売日: 2003/11/27
• メディア: CD

Ｙｏｕ Ｔｕｂｅ！で公開されているクラウスのこの不可思議で冷たい世界をご覧あれ。

オペラ・ロック(紙ジャケット仕様)

• アーティスト: クラウス・ノミ
• 出版社/メーカー: BMG JAPAN
• 発売日: 2005/05/25
• メディア: CD

Klaus Nomi - The Essential

• アーティスト:
• 出版社/メーカー: BMG International
• 発売日: 2002/02/26
• メディア: CD

Simple Man

• アーティスト:
• 出版社/メーカー: BMG Japan
• 発売日: 2004/07/20
• メディア: CD

 

コメント 5

クラウス・ノミのことは全く知りませんでしたが、『急いで口で吸え！』を聴いていて、あの中にあってこの曲はいい意味で異彩を放っているように感じました(スネークマンショーの内容が内容だけに余計に＾＾；)。
荘厳な響きの歌声で、まるで讃美歌のようでした。
by 下総弾正くま (2009-01-14 08:00) 

スネークマンショーはボクは当時カセットを買ってしまいましたね。当時はクラウス・ノミを意識したことはありませんでした。寂寥感のある声だなって思う程度でした。その後ＹＭＯと共演したりする頃になってようやくですね。
by Mineosaurus (2009-01-14 18:56) 

最後まで聞いてしまいました。
不思議な世界でした！綺麗な声です。
by renta12 (2009-01-15 00:00) 

毒蛇に咬まれたら～、急いで口で吸え！言ってみろ！！…
ってヤツですよね。
懐かしいです。

nice1300番目でしたありがとうございました。
キリ番カードを作りましたので良かったら貰って下さい。
by ニャンコ (2009-01-15 11:29) 

キリ番カードありがとうございました。こういうのは初めてです。
by Mineosaurus (2009-01-15 11:51)