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秘せられた華 [音楽]

バルトーク/ヴァイオリン協奏曲第1番Sz36

第1部 アンダンテ・ソステヌート
第2部 アレグロジョコーゾ

バルトークが書いた最初のヴァイオリン協奏曲だが、約50年間一人の女性ヴァイオリニストの遺産の中に秘匿されたままだった。
それまではこの第1番作曲から30年後に発表されていたものが唯一のヴァイオリン協奏曲とされていました。
シュテフィ・ゲイエルという女流ヴァイオリニストはその卓越した音楽技能だけではなく、大変な美人であったらしい。
現在でも、エレーヌ・グリモーのような例外はあるけれど、女流ピアニストには、容姿端麗という女性は失礼ながらあまり見あたらない。
アルゲリッチもショパンコンクールでセンセーショナルにデビューした頃は凄い美人だったのですが、ブラームスの協奏曲を弾く頃にはそれなりの体格になってましたね。
スケールを抑え付ける強靱な指先を支えるものはプロレスラーのような厳つい肩と太い二の腕なので、可憐で華奢なピアニストはどうしてもショパンで止まってしまう。
けれど、ヴァイオリニストには今でも美人が多いのは何でかなあ。
ルーマニアとかハンガリーは日本と同じでラストネームが前に来る。ナディア・コマネチという女子体操選手がいたけど、ナディア家のコマネチという並びなのですね。だからゲイエル家のシュテフィという意味でゲイエル・シュテフィが正しいようです。
で、バルトーク(これも『姓』ああややこしや…)はこの女流ヴァイオリニストにぞっこんだったようで、この作品を彼女に捧げたんですが、ふられちゃったんですね。
彼女は他の作曲家達にも曲をいくつか捧げられているのです。
でも、写真で見て、それほどの美貌とは思えないのですが、人柄は抜群だったといわれています。
その割りにバルトークのこの作品を死後もずっとしまい込んでいたのですねえ。
第1部の抒情的なフレージングはゲイエルの肖像です。
バルトークはふられてからこの曲を『二つの肖像』という管弦楽曲に編曲していますが、一つ目の肖像にはこのヴァイオリン協奏曲のアンダンテが使われていて『理想的なもの』というサブタイトルが付いています。好きだったんですね。本当に。
ヴァイオリン協奏曲としてはベルクの有名なヴァイオリン協奏曲と同様2楽章の形式です。
ボクはベルクの曲はこの世で最も美しいヴァイオリン協奏曲であると信じて疑わないのですが、このバルトークの第1番の常にない優しさは近代から現代の衣を纏いつつも、大衆から離れることなく、共に進化して行こうとする音楽的、民族的なプライドを感じる作品です。
抒情的であると書きましたが、ロマンティックな回顧趣味的作品ではありません。
その時代の最先端の音楽センスが風通しの良い旋律と抜群の管弦楽法によって融合されている傑作です。
スケールという点では第2番の方が遙かに深く、先鋭的で敏感であるのですが、この曲は女性に捧げられたある意味分かりやすい愛情が実に誠実に織り込まれている点で耳にやさしいのです。
あまり聴く機会がない曲ではあります。第2番の方はYouTubeにもあったのですが。
秘せられた華は日本の音楽市場ではやっぱりまだ秘せられたまんまなのですね。


バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1番&第2番

バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1番&第2番

  • アーティスト: 五嶋みどり,バルトーク,メータ(ズービン),ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
  • 発売日: 2002/05/09
  • メディア: CD
バルトーク:VN協奏曲第2番

バルトーク:VN協奏曲第2番

  • アーティスト: キョンファ(チョン),バルトーク,ラトル(サイモン),バーミンガム市交響楽団
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1998/12/09
  • メディア: CD
バルトーク : ヴァイオリン協奏曲第1番

バルトーク : ヴァイオリン協奏曲第1番

  • アーティスト: チョン・キョンファ,バルトーク,ショルティ(サー・ゲオルク),シカゴ交響楽団,ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1995/04/21
  • メディア: CD

バルトーク:VN協奏曲1&2番

バルトーク:VN協奏曲1&2番

  • アーティスト: メニューイン(ユーディ),バルトーク,ドラティ(アンタル),ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1999/06/16
  • メディア: CD
バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1番&第2番

バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1番&第2番

  • アーティスト: ジェルトレル(アンドレ),バルトーク,フェレンチク(ヤーノシュ),アンチェル(カレル),ブルノ国立フィルハーモニー管弦楽団,チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2004/07/21
  • メディア: CD
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コメント 3

skimble

こんにちは。scoskiです。
そういえば、ヴァイオリニストも顎の力とかいりそうで、筋肉がつきそうですけどCMなどで拝見すると皆様しなやかで美しい方が多いですね。
曲を贈られるなんてロマンチックですが、実際にやられたらちょっとキザすぎるなあと思ってしまいます。(汗)でも、音楽の世界の方同士ならやっぱり嬉しいのかな?

娘さん、アレルギーなのですね。スコを暫く見ていたことからも、動物を愛する気持ちはあるのに、本当に可哀想ですね…。どうぞお大事に。
by skimble (2009-01-20 11:09) 

toraneko-tora

我が家へお出かけいただき有難うございます
取り急ぎお礼に伺いました これからもよろしくお願いします
by toraneko-tora (2009-01-20 20:43) 

Mineosaurus

こちらこそ!
by Mineosaurus (2009-01-20 22:09) 

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