霊感の復活 [音楽]
シベリウス/交響曲第3番ハ長調op.52
第1楽章 アレグロ・モデラート
第2楽章 アンダンテ・コン・モート、クワジ・アレグレット
第3楽章 モデラート-アレグロ(マ・ノン・タント)
クレルヴォ交響曲を加えて彼が書いた8曲の交響曲的作品の中でターニングポイントにある作品だと言われる。
それは形式の昇華や最後の7番の交響曲への明確な方向性の見え方などに現れている。
でも、ボクにはこのコンパクトな作品が持つ賛歌的な雰囲気が、第2番の後、乱れた息を整えて発したシベリウスの自然の中での復活の声ように聞こえる。
第1楽章冒頭の音取りはマーラーの第4番の雰囲気を連想させつつ、すぐに厚く、空気の冷えた自然の中で吐く息の厚さを感じさせるような、切れ切れの歌の魅力に聴き惚れる。
チェロによる第2主題の仄暗くそれでいて緩やかに流れる旋律の暖かさが人と自然の対峙を思わせる。
第2楽章のアンダンテの主題は暗く厚くそして野太く、情動がウロボロスのように螺旋を描いて情熱を煽り立てる第2番の終楽章のテーマが明るく、全ての情念をそぎ落として光を纏って復活したような、簡潔でどこまでも続くような変奏を聴かせる。
交響曲第2番で鳥肌が立つ思いで沸き上がる感動を覚えるフィナーレの旋律の原形が見えたような感じがする。
何度繰り返されても苦にならない音楽です。
第3楽章はスケルツォの部分とフィナーレのコラール主題に基づく部分が融合していて各楽章の境目が滲んできている。
この部分は第2番のフィナーレほどではないにしろ、感動的です。
シベリウスという作曲家の旋律線はどの作曲家にも似ない。
その意味で同じく自然を感じさせるブルックナーと大きな隔たりがありながらいつも一方を聴いているときにボクはもう一方を思い出す。
音色がもつローカリティというものが空気の温度を伝える。希有の作曲家です。
チャイコフスキーもまた冬の国に住んでいたのですが、彼の音楽は窓の外の厳しい降雪の中に佇むことはなく、ペチカのオレンジ色の炎の中で感じている温度が支配しています。
シベリウスは、シベリウスの音楽は明らかに戸外に出ている。
そして、自然の中に一片の無駄がないように、この作品にも捨てるところがない。
シベリウス:交響曲第1番, 第3番(アイスランド響/サカリ)
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Naxos
- 発売日: 1998/11/01
- メディア: CD
- アーティスト: 渡邉暁雄,シベリウス,日本フィルハーモニー交響楽団
- 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
- 発売日: 2007/05/23
- メディア: CD(凡百の演奏よりも説得力を持つ。この人は日本人ではない。)
聴いてみようと思います♪
by リュカ (2009-04-16 08:39)