最初のソナタ-メトネル [音楽]
メトネル/ピアノソナタ第1番ヘ短調OP.5
第1楽章 アレグロ
第2楽章 インテルメッツォ:アレグロ
第3楽章 ラルゴ ディヴォート(荘厳に)
第4楽章 フィナーレ:アレグロ リゾルート(決然と)
全四楽章。
スケルツォに見立てた間奏曲を第2楽章に当て嵌め、古典的なスタイルを採っているが、内容は後期ロマン主義の意気に溢れている。
第1楽章、最初の動機が何度か奏され、その後に引き継がれる主題はメトネルの後期にある複雑なものではなく、シューベルトの歌謡性を想起させる明快なもの。
高く置かれたそのテーマまで螺旋のようにパッセージが巻きあがって行くその見事さにボクはもう何度も聴き惚れてしまっている。
メトネルが常に意識していた友人ラフマニノフのように和音が混然となって様々の方向から奇蹟のように立ち上がってくるようなスリルはないけれど、きっちりとした構成の中に決して埃を被ったような古くさいフレーズは聞こえず、爽やかなロマンティシズムに溢れている。
スクリャービンやラフマニノフを通過して、整理し、そぎ落とした秀作。
12分強の楽章のさわりだけを紹介。
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残念だけど、この曲はYouTubeにはなかった。
第2楽章は間奏曲と題されている。
でも、決して軽くなくて、この辺サラリと流れないのが音楽を複雑にするんだろうけど、そういう作風はもうこの作品当たりからはっきり出ているね。
短いエピソードで、第3楽章の荘厳なラルゴへの準備。
ピアノのように音の繋がりをアルペジオで紡がなければならない鍵盤楽器でラルゴという指定がいかほどの意味を持つものかずっと疑問があるのだけれど、ベートーヴェン的アダージオやバルトークのピアノ協奏曲第3番のように音と音の間合いを残響と静謐まで音として捉えて行くやり方。
調性音楽であっても現代的という表現以外にない。
現代音楽には聴衆を拒み、音楽の観念を深く追求して行くスタイルと19世紀からスムースにスタイルを踏襲しつつ感覚を研いで行くものの2つの大きい流れがある。
前者を新しい音楽という意味を込めて現代音楽。
後者を音を楽しんできた時代の流れのなかで途切れずに継続する現代の古典音楽とするなら、メトネルは明らかに後者の音楽家だ。
第4楽章はコーダの堂々とした堅牢さの中に第1楽章の主題が回帰し、帰結する。
ボクは頑丈に建てられた、音の建築物の外をグルリと回って最初の地点に帰る。
Medtner: Complete Piano Sonatas, Forgotten Melodies / Hamelin
- アーティスト: Nikolay Medtner,Marc-André Hamelin
- 出版社/メーカー: Hyperion
- 発売日: 1998/10/27
- メディア: CD
Nikolai Medtner: Complete Piano Sonatas; Piano Works [Box Set]
- アーティスト: Nikolay Medtner,Boris Berezovsky,Geoffrey Tozer,Hamish Milne
- 出版社/メーカー: Brilliant Classics
- 発売日: 2008/11/11
- メディア: CD
Medtner: Piano Sonatas & Forgotten Melodies
- アーティスト: Nikolay Medtner,Geoffrey Tozer
- 出版社/メーカー: Chandos
- 発売日: 1999/05/18
- メディア: CD
クラシックは奥が深いですね。
by SilverMac (2009-12-04 21:22)
音楽っていいですね。クラシックって言うけど、聴いてる自分は現代に生きてるわけで、感じている耳や心はその音楽の普遍的な部分に共感してるんでしょうね。
by Mineosaurus (2009-12-04 21:42)